幼なじみの彼とわたし
「亜衣…」

「…はい」


びくっと体が硬直してしまう。
遥ちゃんはわたしの名前だけ呼ぶと、ジャケットをもぞもぞさせながら座る体勢をかえる。

そして、ふぅーっと息を吐くと膝まずいて黒っぽい小さな箱をわたしに差し出す。


「え?」


これって…?



「亜衣。高森亜衣紗さん、俺と結婚してください」


ぱかっと箱があくのと同時に聞こえてきた言葉。


これって…プロポーズ!!

うそ?本当?
夢?…じゃないよね?


わたしを見つめたままの遥ちゃんと、小さな箱の中で存在感を放っているリングと。

交互に見ながら、さっきの遥ちゃんの言葉を反芻する。


返事しないとと思うのに、声も何も出てこない。
ただただ頭を横にふりながら溢れ出てくる涙を拭っていると。


「亜衣?」


ふわっと遥ちゃんが抱きしめてくれる。
返事しなきゃ。


「嬉しい。よろしくお願いいたします」


泣きすぎて何言ってるかわからなかったかもしれない。
でも、遥ちゃんは「こちらこそ」と言って、わたしの薬指に指輪をはめてくれた。

サイズがぴったり。
さすが遥ちゃん。
泣きながらもニコッと笑って見せると、ちゅっと優しいキスをしてくれた。
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