幼なじみの彼とわたし
「いや、いいんだけど。俺にとっても初めてのキスの日なんだ」


え、そうなの?
そういえば、遥ちゃんの恋愛話って聞いたことなかったな、と思いつつ、わたしが初めてなのは嬉しい。


「亜衣のこと大好きなのに、勇気がなくて告白できなかったって言う残念な日でもあるんだけど。でも、亜衣の隣に並べるように、好きになってもらえるように頑張ろうって思った日でもある」


ちょっと俯きぎみなのは照れてるのかな。


「…遥ちゃん」


そんな思いのつまった日だったんだ。
何も知らなかった。
ただの大安だなんて思ってた自分が情けない。


「まぁこの通り、全然成長できてない、ただのヘタレなんだけどな」


苦笑いを浮かべる遥ちゃん。
そんなことないに決まってるじゃん。


「そんなことないよ!わたしにとっては世界一の旦那さんなんだから!」


隣には歩みを止めた遥ちゃん。


「亜衣、声大きい。けどめっちゃ嬉しい」

「……!」


確かに声が大きかったかも。
一気に顔が赤くなってきたのを実感する。


「チュッてして」


聞こえてきた声の主はもちろん遥ちゃん。
自分のほっぺをつんつんしている。
あの日のキスを思い出す。


「それ、わたしのセリフでしょ?」

「それは覚えてたんだ?」


遥ちゃんは楽しそうに笑っている。
覚えてるに決まってるじゃん。

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