幼なじみの彼とわたし
「麻ちゃんが指切っちゃって。わたしのバッグに救急セットあるから…」

「勝手にとっていい?」

「うん、いいよ。お願い」


その返事を聞くか聞かないかくらいで、遥ちゃんはわたしのカバンから救急セットを取り出すと、「吉田行くぞ」と、麻ちゃんの切った方の手首をつかんで、少しはなれたところに手を洗いに行って手当をしている。

遥ちゃんは麻ちゃんの手首をしばらくつかんで、真剣な表情で見ているようだ。


あれ、なんでだろう。
すぐ準備の続きをしようと思うのに、ふたりがなんか気になってしまう。
気にしないようにすればするほど、ついチラチラ見てしまう。
もう、なかなかできないじゃない。


「西本ー!吉田ー!大丈夫かぁー?」



モーリーもかけよっている。

麻ちゃんのかわりに、いずみんが包丁仕事をしに来てくれた。


「気になる?」

「え?」

いずみんの目線の先をたどると、遥ちゃんと麻ちゃんの姿。


「あ、うん、大丈夫かなぁと思って」

「ふたりの仲が?」

え?ふたりの仲?


「いや、麻ちゃんの指でしょ?」

ふふっと笑ったあと、「美男美女だよねー」なんて言いながら、いずみんは麻ちゃんの続きの野菜を素早く切っていく。

もう一度ふたりの姿を見ると、絆創膏を巻いているところらしい。
やっぱり真剣な表情の遥ちゃんと、笑顔の麻ちゃん。


なんでだろう、何かが引っかかる。
ダメだ、準備しないと。

頭をぶるぶるっと振って準備に専念した。

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