幼なじみの彼とわたし
ちらっと麻ちゃんたちの方を見てみるけれど、三人で話し込んでてわたしの視線には気づいてないみたい。


どうしよ。


モーリーの友達だから、無下にもできず。
とりあえず、にっこり笑っとく?


最初はちょっと構えていたけれど、森田さんは話し上手聞き上手で、気まずい空気になることはなかった。
ついつい話をしてしまうかんじだ。


「亜衣紗ちゃん、連絡先聞いてもいい?」

森田さんは笑顔でスマホを見せている。

連絡先か。
こういう経験ないからわかんないけど、これ、すぐ教えていいものなの?
でもいい人そうだし。
ま、いいよね。


「え、あ、はい、いいですよ」

慌ててスマホを取り出す。


「よかったぁ」

よかったぁ、って森田さん、大袈裟な。


スマホを使いこなせていないせいで、なかなか交換できず、結局スマホを森田さんにわたして操作をしてもらう。
連絡先の交換が終わるとスマホを返しながら森田さんは言った。


「そろそろお友だちの方に行った方がいいかもね。ちらちらこっち見てるし。ちょっと視線が痛いから」

「え?」


麻ちゃんたちの方を見ると、麻ちゃん、いずみん、遥ちゃんの三人がこっちを見ている。

あぁ、お手洗いに行くって言って出ていったままなかなか帰らなかったから、心配してくれてたのかなぁ。
それにしては、三人で何やら盛り上がってるように見えたけど。


「あぁ、大丈夫ですよ。長いトイレだなぁと思ってるだけと思います」

「そう?」

「はい、それか迷子になってないか、と思ってるんじゃないですかね。わたし、方向音痴だし」

「そうなんだ。そういうとこも女の子っぽくてかわいいね」

目の前にはにっこり笑う森田さんの顔。
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