幼なじみの彼とわたし
夜とはいえ、まだまだ外の蒸し暑い空気がべっとりと肌を包む。


「モーリー、ほんと幸せそうだったね」

「あぁ」

「奥さんもキレイだったね」

「そうだな」

「結婚ってすごいよね」

「うん」

「わたしもできるかなぁ」

「…できなかったら、俺がもらってあげる」

「え?」


心臓がドクンとして、思わず足が止まってしまった。
そんなわたしに気づいて、遥ちゃんが振り返ってこっちを見ている。
言った本人はクールな顔をしていて何事もなかったかのようだ。


「遥ちゃん、今何て?」

「ん?あ、俺、何か言った?」


だよね、あんなこと言わないよね。
なぁんだ、聞き間違いか。
って、わたしなんかショック受けてる?
そんなことないよね、ないないないない。
遥ちゃんは幼なじみ。
わたしもそう思ってるし、遥ちゃんもそう思ってるんだから。


「ううん、聞き間違いだったみたい」

「………」


それっきり無言のままふたりで歩く。
隣を見上げてみると、まっすぐ前を向いている遥ちゃんの横顔がある。
何か考え事だろうか。
何か声をかけようかと思っていると、ふと右手が何かに包まれ、遥ちゃんと手を繋いでいると認識する。


「…遥ちゃん?」

どうしたんだろ。
繋がれた右手と遥ちゃんの顔を交互に見てしまう。


「亜衣、今日は手を繋いで帰ろう」

ふわっと笑う遥ちゃん。
この笑顔の破壊力ったら。


それより、遥ちゃん、どうしちゃったのかなぁ。
急に手を繋ごうとか。
いつもお酒強いのに、今日は酔ってるとか?
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