幼なじみの彼とわたし
二人の姿を見るとだんだんイラっとしてきて、グラスに残っていたビールを全て飲み干して、少し乱暴にグラスをテーブルに置いた。


亜衣のやつ、なんで声かけられてんだよ。
しかも、笑顔で答えてるし。
スマホを出して交換する気まんまんじゃねぇか。


そんな俺の表情を見たいずみが言った。


「西本くん、顔もいいし、背も高いのに、なんで彼女いないんだろうと思ったけど。…そういうことなのね」


ふふ、っと、にっこり笑っている。
あ、いや…と思ったところで、自分の顔を俺の耳に近づけて、「西本くん、顔!」と指摘される。

殺気だってるよ、と。


いずみの言う、そういうこと、が何を指すのか聞かなくてもわかる。

いずみは鋭い。
って、俺がわかりやすいのか。


俺も小声でいずみに、「内密に」とだけ伝える。


それに対して、吉田はキョトンとしながら、いずみと俺を交互に見ている。


「え?…二人とも何?…そういうことって?え?」

鈍すぎるだろ、吉田。


幼馴染みだといつも答えてはいるけど、それだけで毎週ごはんを食べに家に行ったり、わざと服を置いて帰ったりはしない。

亜衣にはもちろん、まわりにも俺の存在をしっかりと見せつけておくため。
残念ながら本人はピンと来ていないみたいだけど。
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