お前が好きだなんて俺はバカだな
先輩の家に着くと、また美味しいお茶が出てきた。

先輩の家って、誰か他に来るのかな。

「先輩、意外とお茶の味とかこだわったりするんですか?」

「四六時中こだわったお茶を飲むわけじゃないけど、たまには切り替えは必要だからな。」

「切り替えですか...。」

「そう。頑張ったときとか、少し苦しいときとか、嬉しいときとか色々だな。」

「なるほど...。
私は、てっきり先輩の家には他にも色んな人が来るのかと思ってました。」

「来ることは想定して余分に食器があるものの...お前以外は入れてないな。
引っ越したとき以来、家族も来ないし。」

「え、どうしてですか?」

「基本、他人にプライベート空間には踏み込んで欲しくないんだ。よっぽどの人じゃない限りは。」

「よっぽどって...私はいいってことですか?」

「そうだ。お前は特別。」

なんだろう。

私以外断固家に入れません!

っていう姿をまず見たことないから、特別感があんまりしないっていうか...。

「あの...だって、前の彼女さんとか、お家に入れてあげなかったんですか...?」

「...前の彼女さんとは?」

「いないんですか...?
私と付き合う前に...付き合ってた女の人...。」

「え、逆にお前にはいたの?元彼。」

「え、なんでそうなるんですか?
私はいませんよ。」

「じゃあ、なんで俺はいることになってんだよ。
これまで彼女いないって言わなかったっけ?」

「え...そうなんですか...?
言ってないです。
だって先輩、モテるから...彼女とか何回か作ってるんじゃないかと思ってました。」

「...は?
お前は俺のこと一体なんだと思って。。。?」

「す、すみません...。」

だって...慣れてる感じがしたから...。

壁ドンとか、顎クイとか、初心者なのにあんなに容易くできるんですか...?

それとも...彼女はいなくても、それが常習なんじゃ...。

「先輩史上初の彼女が、私なんて、ちょっと信じられません...。」

「お前がそれを信じてくんないところが俺は信じられん...。」

「え...。」

「彼女どころか、恋愛すら初だし、俺。」

「そ、そうなんですか...?」

「そんなに驚くことか...?」

「驚きますよ...だって...。」
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