お前が好きだなんて俺はバカだな
「あの...ついでにもう少し、ききたいことがあるんですけどいいですか?」

「いいよ。」

私は、昨日からもうひとつ気になっていたことを先輩に話した。

それは。

「俺と会長の噂...?」

「そうです。
えりなちゃんに聞きました。」

「どんな噂を?」

「駅前を2人で歩いてたり、
放課後に手紙を渡しあってたり、
バレンタインに会長が手作りのお菓子を渡して...
先輩も会長に花束を渡していた...
って...。」

「...はぁ?」

「あくまで噂...ですよね。
だって、先輩、そういうことはありえないって前言ってましたもんね?」

「ああ。
それ、たぶん解釈を間違ってると思う。」

「思いあたること、ありますか?」

先輩は少し腕を組んで考えてから、こう話した。

「会長と駅前で話は何度かしたことあるけど、別に待ち合わせてたわけでもなく、いつも偶然会っただけだったし。
そういや、その時決まって方向音痴だからとかなんとか言って、道案内させられてたな。

手紙っぽいのって言えば、うちの学校は予算関連のやりとり未だに封筒でやってるからたぶんそれだな。あの人、危機管理がなってなくて、ひとの下駄箱とか突っ込んだりして意味なく渡してくるから突っ返して注意した覚えがある。

まあ、お菓子っていえば、確かにクッキーとかくれたけど、他のみんなの分もまとめて袋に入ってる感じだったし。
俺にまともにくれたのって、今まででポ◯キーの中にある小袋ふたつのうちのひとつくらいだろ。

それと、花束はたぶん、卒業シーズンの話だな。確か、先生に渡す花束を会長が花屋に受け取りにいくの忘れて俺が取りに行って渡した覚えがある。」

「...なるほど。
そういうことだったんですね。」

「...意外と見られてんだな。
なんか恐ろしい。」

ということは、誰かがそういう風に誤解して見ちゃったものが、伝わっていった感じだったんだ...。

よかった...。

ひとまず安心。

「まあ、でも...。
そんな噂立てられてたら不安にもなるよな。」

「そうですよ。
めちゃくちゃ不安でした。」

「それはほんとごめん。
これからは気をつける。」

「気をつけてください。」

はぁ...。

これでまたスッキリした。

私は、先輩が淹れてくれたお茶に口をつけた。

「それ、冷めてるだろ。
新しいの淹れてきてやるのに。」

「いいですよ。
だってお高そうですし。」

「お前のためだったら、こんなのいくらでも淹れてやるよ。」

先輩...。

私は、嬉しくて、グイッとお茶を飲み干した。

...冷めてもおいしい。

「じゃ、先輩。
ここにもう一杯ください。」

「分かりましたよお嬢様。」

「もぅ...先輩...。」

「それと、俺の分のシュークリームもよければ食べていいぞ。」

「え、そんな...。」

確かに、シュークリームは大好物だけど...。

こんな先輩の甘い誘惑に流され続けていたら、後々大変なことに...。

「どうぞ。
召し上がれ。」

先輩が、爽やかな笑顔で、私の目の前に例のものを差し出す。

...。

甘い誘惑に負けました。
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