お前が好きだなんて俺はバカだな
また先輩の家まで来てしまった。

いつも通り、お茶とお菓子を出してくれる。

そこまで気を使わなくてもいいのに...。

でも、やっぱりここでも、お互いに気まずい雰囲気が流れる。

いきなり会って家まで来ても...話すことが思いつかなくて...。

こういうとき、いつもだったら、先輩が皮肉でも嫌味でもなんでも言ってくれるんだけど、今はそれがないから...。

先輩は、時折、自分で淹れたお茶に口をつけたりしている。

それを見ていると、やっぱり、申し訳ない気持ちで...。

きっと嫌だろうな。

ひとに言われたこと気にして、あんなことをしてしまった私が、許せないんだろう。

それで、私のこと...。

「あのさ。話があるんだけど。」

「...は、い...。」

怖くて、少し身構えてしまう。

だって...このまま...

最悪、別れを告げられる可能性だって...。

「...今まで、本当に申し訳ないと思ってる。」

「え...?」

「お前の気持ちを分かってやれなくて。
不安にさせて、ごめん。」

「そんな...先輩は何も...。」

「生徒会室でのこと...。
なんとなく、俺が不安にさせたからだって、思ってはいたけど、どうしたらいいのか分からなくて。謝ることもできなかったから...。」

「え、先輩謝ってましたよ?
ごめんなさいって...。」

「...そうだっけ...。」

「はい...。」

「ごめんあんまり覚えてない...。

というか俺...なんかカッコ悪いな。」

「そんなこと...先輩はカッコ悪くなんかありません。」

「...。」

先輩は頭を押さえてため息をついた。

私こそ、カッコ悪いんだ...。

「私こそごめんなさい。私があんなことして...先輩を嫌な気持ちにさせて...。」

「違う...嫌なんかじゃない...。」

「嫌じゃ...ないんですか...?」

「嫌じゃないよ。むしろ、本来は喜ばしいことだろ...。でも、結野は不安で無理してんだろうなって...それがほんと申し訳なくて...。」

「先輩...ごめんなさい。」

「お前は謝らなくていい。
悪いのは俺だから。」

「違います。私が...私が先輩とのこと...見せつけるようなことしたんです。わざと...なんです。」

「...。」

「先輩も気づいてましたよね...見られてるって...。」

「...。」

「最低ですよね。
こんな私、嫌われたって...仕方ない...。」

なんで泣くの...?

泣く資格なんてないのに。

...。

気づくと、先輩の腕の中に抱かれていた。

「先輩...だめなんです、私...。
ほんとは、こうしてるの、は...。」

「だめじゃない。」

「どうして...ですか...。
ひどいことしたのに...。」

「俺はお前が好きだから。」

「こんな私をですか...?」

「お前だから好きなんだ。
仕方ないだろ、好きなんだから。黙って付き合えよ。」

「でも...。」

「俺だってこんなこというのはひどいだろうけど、一昨日のお前のキスは、悪くなかった。」

「先輩...。」

「そんなに俺に罪悪感感じるなら...
ここで俺にもう一度、してみろよ...。」

そう言って、意地悪に笑う先輩...。

して、ほしいの...?

で、でも...緊張して...。

でも...でも...。

先輩に許してもらいたい...!
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