お前が好きだなんて俺はバカだな
歩いている先輩の背中を見つめて。

それが、なんだか切なくて。

声をかけても何にもならないから。

独りになってしまった先輩を励ますことなんてできないから。

「先輩、私寂しいです。」

私は先輩を引き留めた。

先輩の背中にしがみついた。

子どもみたいに。

「...寂しいのはお前だから、俺は強がる必要がないと?」

「...。」

「そんなにお前に気を使わせて、どういう顔すればいいのか分からないな。」

「先輩...私。」

「...。」

「私も、先輩がいなくて寂しかったんです。本当です。気を使ってるわけじゃないんです...。」

「...。」

また、虚しい空回りで終わってしまったんだろうか...。

意地を張ることもできず、私はしがみついていた手を離した。

すると、

先輩は振り向くと、しゃがんで私の肩に手を置いた。

笑ってる。

「お前が寂しいなら、一緒にいてやってもいいけど?」

「...おちょーしものですね、先輩。」

「うるさいなー。俺の家に来て料理作ってくれるんだろ。」

先輩は私のほっぺたをつんつんしてご機嫌そうだ。

「そんなに嬉しいですか?」

「嬉しい。」

無邪気にそう言って笑う先輩に、キュンとしてしまう。

先輩は私の頭をくしゃっとして、それから、
立ち上がった。

今度はクールな表情の流し目で、私についてくるように言った。

別の人みたいだけど、どっちも先輩なんだよな...。
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