お前が好きだなんて俺はバカだな
「...何見てんの?」

「...!」

「ああ...俺の携帯か。」

「ご、ごめんなさい...。」

お風呂上がりの先輩に、携帯勝手に見たのバレちゃった...。

「で、なんかあったか?」

「えっと...何も。」

「そうか。つまんない彼氏で悪かったな。」

「先輩、怒ってます...?」

「怒ってないよ。見たいなら好きなだけ見ればいい。」

なんか軽い感じ...。

見られたくないデータとかは消してるのかな。

「先輩、携帯あまり使ってないんですか?」

「使ってないな。連絡用ぐらい。」

「アプリとか何も入ってないですね。ゲームもしないんですか?」

「今は全くしないよ。本来ならガラケーでもいい。」

「そうなんですか...。」

この際徹底的に見てやろうと思ったけど、検索履歴とかも、なんか数学の解法とか、難しい語句を調べたようなものばかりだ。

画像も何にもない。

でもひとつだけ、先輩の携帯に面白いものを発見した。

それは。

「先輩、エセラビちゃんスタンプ持ってるんですね。」

「...。」

「お揃いですね、先輩。
私にもスタンプ送ってくださいよ。」

「...やっぱり返してそれ。」

先輩の過剰反応に思わず笑ってしまった。

「先輩、可愛いです。」

「最近可愛い連呼しすぎだろ。少しは俺の立場も考えて...。」

「だって...。」

笑いすぎてなんだか涙出そう...。

と、思ったら本当に泣けてきちゃった。

「すみません...情緒不安定で...。」

「...不安か?」

先輩が側にいて優しく背中をさすってくれる。

「最近、少し離れてたもんな。」

「全然、そんなんじゃないんですけど...。」

「そんなんじゃないって...?」

「えっと、不安とかじゃないと思うんです。先輩は前に比べてすごく優しいですし...。」

「んー...。

まあいいや、おいで。」

ぎゅーっと先輩が抱きしめてくれた。

とにかく、先輩にこうして欲しかったんだと思う。

「...先輩、いい匂いですね。」

「かぐなばか。」

「でも、先輩の匂い、すごく落ち着きます...。」

「...。」

「先輩...。」

「なに?」

「先輩は、急に泣いちゃうようなときでも我慢しちゃうんですかね。」

「...お前みたいにピーピーなく訳にいかないだろ。男だし。」

「それもそうですね。
先輩強いです。偉いですね。」

「何がだよ。」

「いつもお家で1人なのに、懲りないで私のこと励ましてくれるんですね。」

「さっき寂しいって言っただろ。」

「でも、強がってみせるって言ってました。今は私が寂しいから一緒にいてくれてるんですよね?」

「両方だよ。彼女に会えなくて寂しくない彼氏なんていないだろ。」

「それもそうですね。

...そう...なんですかね...。」

「...。」

先輩は私の髪にそっと触れた。

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