お前が好きだなんて俺はバカだな
「僕に話って何?」

東條さんは不思議そうに首を傾げる。

「最近、先輩に何かしました?」

「特段目立つことは何もしてないけど。
まあ、いつも通りかな。」

「喧嘩...殴りあったりしてません?」

「まさか。もうそんなことするわけないよ。必要最小限の実力として、軽く脇腹つつくだけだよ。」

「そうですか。では。
私はこれで。」

「...え、待って。
そんな意味深な質問してもう行くの?」

「はい。」

「えー。
僕にも質問の意図を知る権利ってあると思うなー。」

「強いて言うと...なんとなく。」

「なんとなく??
美礼くんの様子がおかしいとか?」

「いえ。そういうわけでもあるというか、
ないというか。」

「あー...。
なるほどね。」

「はい?」

「そういうことだね。たぶん。」

「どういうことですか?」

「分かんない。」

「...。」

「君にだって分かんないんでしょ。
だったら僕にも分かんないよ。」

「それもそうですね。」

「うん。愛ってそういうものだよね。」

「愛...?」

「僕がよくわかんないけど黒潮に愛を込めて餌をあげるのと同じだよ。」

「一緒にされても...余計分かんないです。」

「だよねー。」

「私たちって...そういう感じなんですかね?」

「そういう感じ?」

「その...愛というか...。」

「うーん、正直分かんないよねー。気になるなら思い切って美礼くんにきいてみれば?」

「...そうですか。」

「まあ、でも結野ちゃん最近明らかに変わったよね。」

「...そうですか?」

「うん。大人っぽくなった。」

「...皆にそう言われたんですけど...。」

「美礼くんにも?」

「はい。」

「美礼くん、やっぱり素直だよね。」

「はい...。」

「美礼くん、また寂しいだろうな...。」

「え、どうしてですか?」

「美礼くんはまだ子どもだからだよ。
というより、子どもでいたいのかな。」

「先輩が...?」

「そう。美礼くんは可愛いよ。」

「...東條さん、よく分かってるんですね。」

「まあね。美礼くんのこと分かろうと努力したし。」

「...。」

「嫉妬した?」

「いえ。単純に羨ましいだけです。」

「やだなー。
君には敵わないこと前提に決まってるじゃないか。僕がなれるのは友達だけだよ。」

「東條さんって、意外と真摯なんですね。」

「まあね。僕のこと見直した?」

「はい、少しですけど。」

「どうもありがとう。」

あ...。

その笑い方、先輩と一緒だ...。

「類は友を呼ぶって、このことだったんですね。」

「どういうことー?」

「いえ、なんでもないです。
ありがとうございました。
先輩と仲良くしてあげてください。」

「えへへ。君もね。」
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