お前が好きだなんて俺はバカだな
少し重い気持ちで先輩の家まで来た。

早く気持ち、切り替えなきゃ。

と、思ったらまた先輩がお茶を淹れてる。

良い香り...。

これが先輩のペースなのかな。

やっぱり私の心持ちとは全然違う。

「これって、アプリコットのお茶ですね。」

「うん。」

「美味しそう...、ありがとうございます。」

「どういたしまして。」

お茶を飲んでみる。

...やっぱり美味しい。

丁寧に淹れてくれてるのを感じる...。

先輩も黙ってお茶を飲んでいた。

こうするのって毎日かな、それとも私が来たときだけ...?

しばらくそうやって時間が過ぎていった。

こういう時間は気まずい感じはしないけど、先輩の振る舞いがずっときちんとされていることに、距離を感じて少し寂しくなる。

いつ...切り替えようかな。

そうやって、考えていると、ここに来るまでの私の振る舞いって、本当に幼稚だったんだなって気づく。

もっと先輩に似合う素敵な女性になるためには、どうしたらいいんだろう。

「...美味しかったです。ありがとうございます。」

「もっとあるけどいる?」

「いえ。もう大丈夫です。」

私が初めて会ったときみたいな意地悪な先輩は...もう...。

お茶を飲み終わって、先輩がカップを下げてくれたあとも、ずっと考えてた。

そうすることしか、できない気がした。

キッチンにいる先輩の後ろ姿を見る。

いつもと変わらないはずなのに。

食べるものも、ケーキも買ったけど...。

もう、帰った方がいいかな...。

「あの、すみません。
なんだか変なわがままを言ってしまって。」

「別に。」

「迷惑...でしたか...?」

「そんなこと、言ってないはずだけど。」

「そうですよね...ごめんなさい。」

「謝る必要ないだろ。」

「いえ...やっぱり...。
無理矢理でしたから。」

「それならどうするつもりなんだよ。」

「...帰った方がいいですか...?」

「自分の好きなようにしろ。」

目も合わせてくれない...。

どうしたらいいのか、分からない。

しばらく、その場でじっとしていた。

さっきから、間違ったことは言われてない。

だけど...。

もっと、気にかけてくれたって...。

先輩は着替えてくるといって行ってしまった。

とりあえず、ケーキとかを冷蔵庫に入れよう。

...?

「え...これって...。」
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