お前が好きだなんて俺はバカだな
「あ、あのっ。」

休憩室を出ようとする彼に声をかけてしまった。

当然、彼が振り返る。

ど、どうしよう、

言うこと何も思いついてないのに...。

かと言って今更なんでもないですとか
言うわけにもいかないし...。

...。

何も言えない...。

どうしよう、こんな私に呆れちゃうかな。

「...美咲さん。」

「は、はい...。」

な、今度はなに...?

「こちらこそ、申し訳ないことは沢山あります。」

「え...?」

「今更だけど、やっぱり謝っておきたいと思って。
あなたのことを、ひどいことを言って振ってしまって、ごめんなさい。」

あっさり、頭をさげてそう謝られてしまった。

誠実さはもちろん十分あるんだろうけど、

呆気にとられすぎて、謝られた感じがしないというか。

「あ、いえ...そんな、前の話なので、
お気になさらず...。」

そう言うことしかできなかった。

というか、私のこと前から分かってたんだ...。

分かっててあんな他人行儀な...。

まあ、当たり前だよな...。

私だってそうだった訳だし。

そう思えば、なんだか落ち着いてきた。

「頭あげてください。
このことは、水に流しましょう。
その方がお互いにとって都合が良いと思いますから。」

「...。」

頭はあげてくれたけど、返す言葉はいまだ浮かばないみたいだ。

「私がいうのもなんですけど、これからは同じ職場に働く人間として、よろしくお願いします。」

そういうとやっと、

「...はい。

、こちらこそ、よろしくお願いします。」

と、言ってくれた。

良かった。

難なく解決した感じだな...。

これで切り替えられる。

やっと。
< 256 / 335 >

この作品をシェア

pagetop