お前が好きだなんて俺はバカだな
「でも私、実は少しだけ心残りがあって。後悔っていうか。」

「...。」

「この前、数学のノートを見つけたんです。私ではない綺麗な字もいっぱい書かれてました。」

「...。」

「そこに、約束が書かれていたんです。
2人でした約束なんですけど、覚えていらっしゃらないですよね。」

「...はい。」

「確か、数学の課題を教えてもらったときで、私がそれを理解できたから、

なんでもひとつ言うことをきいてくれるって。

そう、約束したんです。」

「......。」

「だから、なんか...振られちゃったときにその約束を使ってれば、なんとか引き止められたんじゃないかなって。そんなわけないですけど。もしかしたらって思っちゃって。」

今どんな顔してるのか見るのもこわい。

それでもそっと見るけど、変わっている気はしなかった。

「今は...時効なっちゃってますかね...。
また、お願いきいてもらうことなんてできないですよね...。」

「お願い...ですか。」

「私のこと、もう好きじゃないのは分かりました。でも、もしその約束を使ってそれでもやり直したいって私が言ったら、どうしますか...?」

これが最後の抵抗だった。
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