お前が好きだなんて俺はバカだな
...。

......。

「なにしたんですか、これ。」

「色々あってさ。」

色々あってさ...じゃなくて。

「なんで課長がこんなところで気を失ってるんですか。」

「そう見える?僕は眠くなっちゃったんだろうなって思うけど。」

...とりあえずどういう状況かというと、
例の課長さんが小さな公園のベンチで某少年探偵に麻酔銃を打たれたみたいに座ったまま気を失っている。

いや、寝てる...?

「さっきから起こそうと頑張ってるんだけど、いっこうに起きる気配がないんだよ。
どうしよう。」

「どうしようってそんなの私に言われても。とにかくなんでこんなことになってるんですか。」

そんな私の問いかけもお構いなしに、相手はこうまくしたてる。

「それにしてもさ。美礼くん尋常じゃないくらいよく食べるんだね。」

「一緒に食事してたんですか?」

「まあね、疲れてそうだったから。」

「まさか、お酒飲ませました?」

「うん。でもちょっとだよ?」

「ちょっとでも弱い人は弱いですから。」

「えー、いってもミジンコの致死量くらいだよ?」

「分かりづらいです。」

「ひとくちかふたくち。
まあ、おかげで色々きけたけどね。
さすがにおうちまではもたなかったみたい。」

私はこの呑気な男の発言に頭を抱えるしかなかった。

とはいえ、殴られたりなどといった具体的な危害を加えられた形跡はなさそうだ。

「遠谷課長、分かりますか?」

「...。」

「うっすら反応した。やっぱり君の力はすごいね。」

「変なこと言ってないで、早くお家に連れていかないと。

課長、起きてください。ここで寝てると風邪引いちゃいますよ。」

「...ゆいの...?」

課長がゆっくり目を開けた。

「お家に帰りましょう。歩けますか?」

まだうつらうつらしているようだ。

「...とりあえず自販で水買ってきますから、それ飲んでください。」

「...。」

小さく頷いたのがわかったので、私は小走りで自販へと急いだ。
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