お前が好きだなんて俺はバカだな
「美咲さん。」
何日かお土産をあげることを続けていると、ついに彼の方から声をかけてきた。
「お話しがあるのですが。今お時間よろしいですか。」
「はい、大丈夫です。」
そういう感じで律儀に確認を取り、少し場所を移動すると、彼は早速、
「この前はご迷惑おかけしました。すみませんでした。」
と、謝罪を重ねた。
「いえ、そんな、
お気になさらず...。」
実はこの件では何回もこうやって謝罪されている。
よっぽど気にしてるんだなと思うけど...。
「毎度差し入れも頂いて、ありがとうございます。」
「あ...はい...。」
相変わらず、礼儀正しさに圧倒される...。
別人...みたい...。
でも、そんな疑惑はすぐに消え去った。
「実は、助けていただいた夜のこと...あまり良く覚えていないのですが、粗相なことをしたのではないかと思うと気が気ではなくて...。」
「え、あ...全然何も...大丈夫ですよ。」
「本当ですか?」
「はい。静かに寝ていただけですので...。
でも、あの、暴食されてたそうですが、大丈夫ですか...?」
「はい。ご迷惑おかけしました。
それと...。」
「はい...。」
「最近お気遣い頂いているのはとても嬉しいのですが...率直に東條さんが何を話したのか気になりまして。」
「いえ...何も...。
少し心配だというお話はされましたが...。」
なんだか、表情的に私が心配されているみたい...。
それに、あえてここでその話をする理由ってなんなんだろう。
「我ながら情けないと思います。
彼には大ごとに捉えられてしまったようで...。」
「いえ...。」
「図々しいのですが、本当に気にしないでください。それをお伝えしたかったんです。」
「はい...。」
「自分は仕事の関係で情緒が不安定でした。
でも、もうそのようなこともないと思いますから。」
ここまで念を押す感じ、お土産作戦は失敗なんだろう。
「私のこと、迷惑ですか?」
「いえ、そうではないのですが。
誤解は解いておきたいと思いまして。」
「誤解...ですか。
それって、私を遠ざけたいってことですよね。」
「それは極端な表現でしょうが、あながち間違ってはいません。
以前もお伝えしたとおり、」
「そうやって、もう自分を傷つけるのはやめませんか。」
「それが誤解なんです。僕は傷ついているわけではありません。」
「...私との関係はいいにしても、そうやってわざと冷たい言い方をするのは自分を律しているようで、抑制しているのと変わりありませんよ。」
「僕は少なくとも律していると認識しています。」
「でも、実際は違います。私を振ったあと、顕著にそれが現れてました。」
「それはどのようなことですか。」
「心あたりはありませんか?」
「...助けていただいた夜のことですか。」
「違います。もっと具対的なことです。」
彼は初めて困惑の表情を見せた。
私がここまで余裕があるのも珍しいからだろう。
でも、今は私の方が一枚上手だ。
こうなったらこちらからはっきりと言ってあげよう。
「とりあえず、私とはもうよりは戻さないとおっしゃっていましたよね。今もそのご決心は変わらないと。」
「はい。」
「本当ですか?」
「本当です。」
「なるほど。私のことは普通か、それ以下ってことですよね?」
「普通の方と同じです。」
「高校にときに私を振ったのも、そう感じたからですね?」
「そうです。」
「私のこと、少なくとも振った後からは一切好きなんかじゃないですよね。」
「はい。」
「分かりました。それがご意思だというのなら、私はそれを信じようと思います。」
「初めからそう言っているつもりですが。」
「別に、本当は真意などもうどちらでもいいんですけどね。もう手遅れですから。」
「何をおっしゃりたいのですか。」
「私から願い下げたいということです。
もうあなたに振り回されるのはまっぴらなので。
嫌いなんです。あなたのことが。」
「...。」
「だから、これまでのこと、私からも忘れるようにお願いしたいんです。
差し入れなども、別に意味があったわけではなくて、日頃の借りを少しでも返したいだけでした。」
「...」
「余計なお世話だとおっしゃるなら、もうそういったこともしません。
それでは。」
「待ってください。」
「なんでしょう?」
「本当はそんなことを言って、怖いんじゃ
ありませんか。」
「どうしてそう思うんですか。」
「相変わらず、あなたは思いやりがある方なのだと実感したからです。
あなたには、到底敵いませんね。」
「...。」
「そんなに、僕は単純ですか。」
「それは...。」
「バカ...ですよね。とても愚かでした。」
「いいえ。やっぱり、正直に打ち明けてもらうことは...難しいんだなって...。」
「出来れば、あなたには自分のことを忘れて幸せになってもらいたかったです。
自分には不可能ですから。」
「そんなこと...ないと思います。」
「いいえ。負担を強いるだけです。
気持ちだけではどうにもならないこともあります。それは自分が1番良く分かっているんです。」
「でも...。」
何日かお土産をあげることを続けていると、ついに彼の方から声をかけてきた。
「お話しがあるのですが。今お時間よろしいですか。」
「はい、大丈夫です。」
そういう感じで律儀に確認を取り、少し場所を移動すると、彼は早速、
「この前はご迷惑おかけしました。すみませんでした。」
と、謝罪を重ねた。
「いえ、そんな、
お気になさらず...。」
実はこの件では何回もこうやって謝罪されている。
よっぽど気にしてるんだなと思うけど...。
「毎度差し入れも頂いて、ありがとうございます。」
「あ...はい...。」
相変わらず、礼儀正しさに圧倒される...。
別人...みたい...。
でも、そんな疑惑はすぐに消え去った。
「実は、助けていただいた夜のこと...あまり良く覚えていないのですが、粗相なことをしたのではないかと思うと気が気ではなくて...。」
「え、あ...全然何も...大丈夫ですよ。」
「本当ですか?」
「はい。静かに寝ていただけですので...。
でも、あの、暴食されてたそうですが、大丈夫ですか...?」
「はい。ご迷惑おかけしました。
それと...。」
「はい...。」
「最近お気遣い頂いているのはとても嬉しいのですが...率直に東條さんが何を話したのか気になりまして。」
「いえ...何も...。
少し心配だというお話はされましたが...。」
なんだか、表情的に私が心配されているみたい...。
それに、あえてここでその話をする理由ってなんなんだろう。
「我ながら情けないと思います。
彼には大ごとに捉えられてしまったようで...。」
「いえ...。」
「図々しいのですが、本当に気にしないでください。それをお伝えしたかったんです。」
「はい...。」
「自分は仕事の関係で情緒が不安定でした。
でも、もうそのようなこともないと思いますから。」
ここまで念を押す感じ、お土産作戦は失敗なんだろう。
「私のこと、迷惑ですか?」
「いえ、そうではないのですが。
誤解は解いておきたいと思いまして。」
「誤解...ですか。
それって、私を遠ざけたいってことですよね。」
「それは極端な表現でしょうが、あながち間違ってはいません。
以前もお伝えしたとおり、」
「そうやって、もう自分を傷つけるのはやめませんか。」
「それが誤解なんです。僕は傷ついているわけではありません。」
「...私との関係はいいにしても、そうやってわざと冷たい言い方をするのは自分を律しているようで、抑制しているのと変わりありませんよ。」
「僕は少なくとも律していると認識しています。」
「でも、実際は違います。私を振ったあと、顕著にそれが現れてました。」
「それはどのようなことですか。」
「心あたりはありませんか?」
「...助けていただいた夜のことですか。」
「違います。もっと具対的なことです。」
彼は初めて困惑の表情を見せた。
私がここまで余裕があるのも珍しいからだろう。
でも、今は私の方が一枚上手だ。
こうなったらこちらからはっきりと言ってあげよう。
「とりあえず、私とはもうよりは戻さないとおっしゃっていましたよね。今もそのご決心は変わらないと。」
「はい。」
「本当ですか?」
「本当です。」
「なるほど。私のことは普通か、それ以下ってことですよね?」
「普通の方と同じです。」
「高校にときに私を振ったのも、そう感じたからですね?」
「そうです。」
「私のこと、少なくとも振った後からは一切好きなんかじゃないですよね。」
「はい。」
「分かりました。それがご意思だというのなら、私はそれを信じようと思います。」
「初めからそう言っているつもりですが。」
「別に、本当は真意などもうどちらでもいいんですけどね。もう手遅れですから。」
「何をおっしゃりたいのですか。」
「私から願い下げたいということです。
もうあなたに振り回されるのはまっぴらなので。
嫌いなんです。あなたのことが。」
「...。」
「だから、これまでのこと、私からも忘れるようにお願いしたいんです。
差し入れなども、別に意味があったわけではなくて、日頃の借りを少しでも返したいだけでした。」
「...」
「余計なお世話だとおっしゃるなら、もうそういったこともしません。
それでは。」
「待ってください。」
「なんでしょう?」
「本当はそんなことを言って、怖いんじゃ
ありませんか。」
「どうしてそう思うんですか。」
「相変わらず、あなたは思いやりがある方なのだと実感したからです。
あなたには、到底敵いませんね。」
「...。」
「そんなに、僕は単純ですか。」
「それは...。」
「バカ...ですよね。とても愚かでした。」
「いいえ。やっぱり、正直に打ち明けてもらうことは...難しいんだなって...。」
「出来れば、あなたには自分のことを忘れて幸せになってもらいたかったです。
自分には不可能ですから。」
「そんなこと...ないと思います。」
「いいえ。負担を強いるだけです。
気持ちだけではどうにもならないこともあります。それは自分が1番良く分かっているんです。」
「でも...。」