お前が好きだなんて俺はバカだな
「ゆいの...?」
「せんぱい...ずっとこうやってぎゅっとしたかったんです。」
「ずっと...?」
「はい。その背中がずっと寂しそうに見えたから。」
「いいかげん諦めようとか、考えなかったの?」
「何度か、そうしようと思いました。
でも、気づいたら独り言とかいっちゃってて。心の底ではずっと先輩のことを想っていました。」
「あ...あの独り言やっぱり俺にむけてだったんだ。。。」
「え、きこえてたんですか!?」
「ん...。まあ...。」
「恥ずかしいです...。」
「...職場で初めて再会したときは、何もかもすっかり変わったんだなって思ったけど、
まだ、変わってないところもあるんだな。」
「内面はそうかもしれません。でも私、外見は少し変えたつもりです。
綺麗に見えます?」
「ああ、綺麗だよ。」
「素直でよろしいですね。」
「もう結野も大人だから、相応に扱われるべきなんだろうな。」
「丁重にお願いしますね?」
「正直そこらへんは未だ不安だな。
早く俺も追いつかなきゃ...。」
「え...?」
そんなこと言うなんて意外だ。
だって、普段仕事すごくできるし、慕われてるし...。
「俺にとっては、本当にすぐ何もかも変わってしまったように見える。まだ別れてそれほど経っているように思えなくて...。」
もう、結構経ってるはずなのに...?
「自分から遠ざけようとしてる一方で、本当に遠ざかっているのがわかって怖かった。
もう誰も俺のことなんて知らないんじゃないかって思うときもあった。」
「先輩...?」
「目が覚めたらもう成人してた。
それからすぐに就職して、やっと仕事に慣れたかと思えば課長にさせられて、すっかり変わったお前と会って、もう何がなんだか...。」
「目が、覚めたら...?」
「元から、少し持病はあったけど、思ったより悪化してたようで、しばらく意識がなかったみたいで...。」
そんなこと、聞いたことない...。
先輩が病気...?
「今はもう平気。身体の問題はほとんど完治してるから。ただ、精神的な問題が深刻だとか言われて、昔から病人扱いされてきたから、それが嫌でまた家を飛び出してきたんだけど...。」
精神的な問題...。
先輩は小さい頃から、辛い思いを経験してきてるから...。
いつしかそれが精神的なショックにつながって、周りもそういう扱いをしはじめて...。
それが原因で先輩が私と別れようと思っていたことも知ってる。
何度かそれを振り切って、付き合い続けて、
いざ振られた時もそのことを気にしてるんじゃないかと思ったから、先輩を必死で引き止めようとしたんだ。
でも、それ以外にまだ病気を持ってたなんて...。
「周りが言う通りだったな。結局、情けないことにあんなに愚かなことをしようとして。」
「情けなくなんてないですよ。先輩、辛かったんですよね。
ずっと1人で抱え込んで...。」
「申し訳ないけど、本来そうやって1人の問題で済むならかえって都合が良かったよ。
でも、流石に死のうと思うくらい苦しくなるとは、そこまで考えが及ばなかった。」
死のうと思うくらい...。
...冗談であって欲しかった。
誕生日の日に、もし間違えて電話していなかったら。
東條さんが先輩を見つけて、私に助けを呼ばなかったら。
先輩が、耐えられなかったかもしれないって。
もう会えなかったかもしれないって...。
「私が側にいれば、少しは先輩、楽ですか...?」
「やっぱり打ち明けたらそう言うんだろうなって思って。正直分からないところもあるし、そうやって負担を強いるのは酷だなと...。」
「先輩...でも、もうそんなこと、気にしなくていいんですよ。逆に、一緒にいられないなんて、私にとってこんなに酷なことはありませんから。」
「皮肉なことだよな、それって...。」
決まって困ればそうやって軽く笑い飛ばすようだけど、その声はいつもより弱々しい。
「あと、もうひとつ、ことわっておかなければいけないことが。だいぶ先立った話だけど。」
「はい...。」
「もし、今後もずっと一緒にいることになったら...。俺の身体には傷があるし、子どもとか...できないから...。」
もう、胸が張り裂けそうだ...。
「俺に構わず、今からでも他の人を選んだ方が、絶対幸せになれるから。
本当はその方が...。」
「ぜったいに、いやです!!
先輩と一緒じゃなきゃ私は嫌なんです!!」
「...。」
「何があっても、私は先輩と一緒にいることを選びます。
だから先輩も私を選んでください。」
必死すぎて、だんだん視界がぼやけていくのを感じた。
とおい...。
もっと、もっと近くに...きて、
せんぱい...。
「せんぱい...ずっとこうやってぎゅっとしたかったんです。」
「ずっと...?」
「はい。その背中がずっと寂しそうに見えたから。」
「いいかげん諦めようとか、考えなかったの?」
「何度か、そうしようと思いました。
でも、気づいたら独り言とかいっちゃってて。心の底ではずっと先輩のことを想っていました。」
「あ...あの独り言やっぱり俺にむけてだったんだ。。。」
「え、きこえてたんですか!?」
「ん...。まあ...。」
「恥ずかしいです...。」
「...職場で初めて再会したときは、何もかもすっかり変わったんだなって思ったけど、
まだ、変わってないところもあるんだな。」
「内面はそうかもしれません。でも私、外見は少し変えたつもりです。
綺麗に見えます?」
「ああ、綺麗だよ。」
「素直でよろしいですね。」
「もう結野も大人だから、相応に扱われるべきなんだろうな。」
「丁重にお願いしますね?」
「正直そこらへんは未だ不安だな。
早く俺も追いつかなきゃ...。」
「え...?」
そんなこと言うなんて意外だ。
だって、普段仕事すごくできるし、慕われてるし...。
「俺にとっては、本当にすぐ何もかも変わってしまったように見える。まだ別れてそれほど経っているように思えなくて...。」
もう、結構経ってるはずなのに...?
「自分から遠ざけようとしてる一方で、本当に遠ざかっているのがわかって怖かった。
もう誰も俺のことなんて知らないんじゃないかって思うときもあった。」
「先輩...?」
「目が覚めたらもう成人してた。
それからすぐに就職して、やっと仕事に慣れたかと思えば課長にさせられて、すっかり変わったお前と会って、もう何がなんだか...。」
「目が、覚めたら...?」
「元から、少し持病はあったけど、思ったより悪化してたようで、しばらく意識がなかったみたいで...。」
そんなこと、聞いたことない...。
先輩が病気...?
「今はもう平気。身体の問題はほとんど完治してるから。ただ、精神的な問題が深刻だとか言われて、昔から病人扱いされてきたから、それが嫌でまた家を飛び出してきたんだけど...。」
精神的な問題...。
先輩は小さい頃から、辛い思いを経験してきてるから...。
いつしかそれが精神的なショックにつながって、周りもそういう扱いをしはじめて...。
それが原因で先輩が私と別れようと思っていたことも知ってる。
何度かそれを振り切って、付き合い続けて、
いざ振られた時もそのことを気にしてるんじゃないかと思ったから、先輩を必死で引き止めようとしたんだ。
でも、それ以外にまだ病気を持ってたなんて...。
「周りが言う通りだったな。結局、情けないことにあんなに愚かなことをしようとして。」
「情けなくなんてないですよ。先輩、辛かったんですよね。
ずっと1人で抱え込んで...。」
「申し訳ないけど、本来そうやって1人の問題で済むならかえって都合が良かったよ。
でも、流石に死のうと思うくらい苦しくなるとは、そこまで考えが及ばなかった。」
死のうと思うくらい...。
...冗談であって欲しかった。
誕生日の日に、もし間違えて電話していなかったら。
東條さんが先輩を見つけて、私に助けを呼ばなかったら。
先輩が、耐えられなかったかもしれないって。
もう会えなかったかもしれないって...。
「私が側にいれば、少しは先輩、楽ですか...?」
「やっぱり打ち明けたらそう言うんだろうなって思って。正直分からないところもあるし、そうやって負担を強いるのは酷だなと...。」
「先輩...でも、もうそんなこと、気にしなくていいんですよ。逆に、一緒にいられないなんて、私にとってこんなに酷なことはありませんから。」
「皮肉なことだよな、それって...。」
決まって困ればそうやって軽く笑い飛ばすようだけど、その声はいつもより弱々しい。
「あと、もうひとつ、ことわっておかなければいけないことが。だいぶ先立った話だけど。」
「はい...。」
「もし、今後もずっと一緒にいることになったら...。俺の身体には傷があるし、子どもとか...できないから...。」
もう、胸が張り裂けそうだ...。
「俺に構わず、今からでも他の人を選んだ方が、絶対幸せになれるから。
本当はその方が...。」
「ぜったいに、いやです!!
先輩と一緒じゃなきゃ私は嫌なんです!!」
「...。」
「何があっても、私は先輩と一緒にいることを選びます。
だから先輩も私を選んでください。」
必死すぎて、だんだん視界がぼやけていくのを感じた。
とおい...。
もっと、もっと近くに...きて、
せんぱい...。