お前が好きだなんて俺はバカだな
教科書、ノート、写真、私とお揃いにしてもらったもの...。
彼は全部残しておいてある...。
「何見てんの?
って、なんだ俺の携帯か...。」
「相変わらずなんでそんなに反応薄いんですか?」
「そこは駆け引きだろ。変に反応したら怪しく思われるだろうし。」
「それは...見られたらほんとは困るってことですか?」
「色々隠す常習犯なら、そうだけど、俺はただ、結野に安心してもらいたいだけ。」
「じゃあ見てもいいんですか?」
「好きなだけどうぞ。」
って言われたから、また見るんだけど...。
ほんとに隙がない...。
「あ、写真...まだ残しておいてくれたんですね。」
「別に端末は変えたけど、データに関しては何もいじってないから。」
前見たときは一切画像なかったから、どうせなら私との思い出を残してもらおうと思って、色々写真とってもらったんだっけ...。
「写真、印刷してアルバムにしましょうか。」
「別にいいけど。」
彼は反対もしなかった。
何もかも受け入れてくれようとしているのが、かえって過去の自分を思い出させる。
「...私は、かろうじて写真はバックアップされてましたけど、部屋の中...片付けちゃったんです...。」
「別にこれから色々もの増えてくるだろうし、整理するのはいいことじゃないか。」
「私は一度、美礼さんのことを忘れようとしちゃったから...。」
「それで、忘れられたのか?」
「無理でした...。ごめんなさい。」
「謝るな。俺のせいだから。」
「そんな...違います、なにも捨てちゃうことなかったんです...。」
「俺だってそうしようとしたよ。
ただ勇気がなかっただけなんだ、これは。」
「でも、それでも思い出を残してくれたことに変わりはありません。」
「それと、お前とはやっぱりまだ時間の感覚が違うから。
お前の方が空白が長いんだよ。その分俺より辛い思いだってしてるんだ。」
「いえ...きっと美礼さんのほうが辛いです。
数年分の辛さも、それまでのこととかも、全部一気に背負わなきゃならなかったから。」
嫌だろうな。
こうやって分かりきったこと言われるの。
私に、彼のなにが分かるっていうんだろうって...。
また、彼が優しく抱きしめてくれる。
「ほんとに、ごめん。」
「え...?」
「結野が俺のこと大切に思ってくれているなら、俺のことを思うと、ずっと辛いと思うんだよ。」
「どうして...?」
「過去に酷いこと言われたことだけじゃなくて、俺がこれまで辛くて全部を投げ出そうとしたんだって、結野はそう思ってるわけだから。」
「自分を、また責めちゃうんですか...?」
「そうだな。たまには。
今までは自分を責めることなんてできるぐらい強くなれなかった。自分が悲しい人間だって、それはまるで綺麗な幻想に溺れるように思えて。」
違う。
それは嘘だって分かってる。
「悲しみに全て浸るなら人は楽なんだよ。
それでもって、どこからも逃げ出してしまえばいいって考えに行き着く。
それは1番わがままで勝手なことなんだって、気づきもせずに。それは弱くて情けない人間がすることだ。」
そんなことじゃないのに...。
弱くて情けない人なんかじゃないのに。
「俺が全て投げ出して、そうしたら悲しむ人がいるって、大切な人を傷つけてしまうってどうしてあのときは分からなかったんだろう。」
それは、苦しくてたまらないから。
人のことを考える余裕なんてなかった。
そのことが一方的に責められるべきことだなんて、
それは絶対違う。
でも、彼自身だって、
そのことを分かってないわけじゃないんだ。
辛いって思う人も、逃げ出したいって思う人も世の中には沢山いるから。
もし、本当に彼の言葉が本当だったら、そういう人たちを情けない、弱いと言って傷つけてしまうことになる。
それを彼が分かってないはずがない。
だから、きっとわざとなんだ。
わざとそういうことを言って、結局はどんな方向からも自分を悪者にしてしまうんだ。
そんなことしたって、私が離れるわけがないのに。
「美礼さんは、ほんとにばかですね。」
彼は私に微笑んだ。
「そんなこと言うなら、私をこれからもずっと大事にしてください。私を傷つけたと思うんだったら、これからは私を幸せにしてください。」
「そんなこと、俺にできるのかな。」
「できますよ、美礼さんだったら。
それがここまで生かされた使命だと思ってください。」
「使命ね...。」
「美礼さんが好きな言葉でしょう?」
「いいや。
どんな言葉も、お前には意味がないんだな。」
「安心しました?」
「ゆいの、ありがとう。」
それは、私にとっても意味がある言葉なのに...。
彼は全部残しておいてある...。
「何見てんの?
って、なんだ俺の携帯か...。」
「相変わらずなんでそんなに反応薄いんですか?」
「そこは駆け引きだろ。変に反応したら怪しく思われるだろうし。」
「それは...見られたらほんとは困るってことですか?」
「色々隠す常習犯なら、そうだけど、俺はただ、結野に安心してもらいたいだけ。」
「じゃあ見てもいいんですか?」
「好きなだけどうぞ。」
って言われたから、また見るんだけど...。
ほんとに隙がない...。
「あ、写真...まだ残しておいてくれたんですね。」
「別に端末は変えたけど、データに関しては何もいじってないから。」
前見たときは一切画像なかったから、どうせなら私との思い出を残してもらおうと思って、色々写真とってもらったんだっけ...。
「写真、印刷してアルバムにしましょうか。」
「別にいいけど。」
彼は反対もしなかった。
何もかも受け入れてくれようとしているのが、かえって過去の自分を思い出させる。
「...私は、かろうじて写真はバックアップされてましたけど、部屋の中...片付けちゃったんです...。」
「別にこれから色々もの増えてくるだろうし、整理するのはいいことじゃないか。」
「私は一度、美礼さんのことを忘れようとしちゃったから...。」
「それで、忘れられたのか?」
「無理でした...。ごめんなさい。」
「謝るな。俺のせいだから。」
「そんな...違います、なにも捨てちゃうことなかったんです...。」
「俺だってそうしようとしたよ。
ただ勇気がなかっただけなんだ、これは。」
「でも、それでも思い出を残してくれたことに変わりはありません。」
「それと、お前とはやっぱりまだ時間の感覚が違うから。
お前の方が空白が長いんだよ。その分俺より辛い思いだってしてるんだ。」
「いえ...きっと美礼さんのほうが辛いです。
数年分の辛さも、それまでのこととかも、全部一気に背負わなきゃならなかったから。」
嫌だろうな。
こうやって分かりきったこと言われるの。
私に、彼のなにが分かるっていうんだろうって...。
また、彼が優しく抱きしめてくれる。
「ほんとに、ごめん。」
「え...?」
「結野が俺のこと大切に思ってくれているなら、俺のことを思うと、ずっと辛いと思うんだよ。」
「どうして...?」
「過去に酷いこと言われたことだけじゃなくて、俺がこれまで辛くて全部を投げ出そうとしたんだって、結野はそう思ってるわけだから。」
「自分を、また責めちゃうんですか...?」
「そうだな。たまには。
今までは自分を責めることなんてできるぐらい強くなれなかった。自分が悲しい人間だって、それはまるで綺麗な幻想に溺れるように思えて。」
違う。
それは嘘だって分かってる。
「悲しみに全て浸るなら人は楽なんだよ。
それでもって、どこからも逃げ出してしまえばいいって考えに行き着く。
それは1番わがままで勝手なことなんだって、気づきもせずに。それは弱くて情けない人間がすることだ。」
そんなことじゃないのに...。
弱くて情けない人なんかじゃないのに。
「俺が全て投げ出して、そうしたら悲しむ人がいるって、大切な人を傷つけてしまうってどうしてあのときは分からなかったんだろう。」
それは、苦しくてたまらないから。
人のことを考える余裕なんてなかった。
そのことが一方的に責められるべきことだなんて、
それは絶対違う。
でも、彼自身だって、
そのことを分かってないわけじゃないんだ。
辛いって思う人も、逃げ出したいって思う人も世の中には沢山いるから。
もし、本当に彼の言葉が本当だったら、そういう人たちを情けない、弱いと言って傷つけてしまうことになる。
それを彼が分かってないはずがない。
だから、きっとわざとなんだ。
わざとそういうことを言って、結局はどんな方向からも自分を悪者にしてしまうんだ。
そんなことしたって、私が離れるわけがないのに。
「美礼さんは、ほんとにばかですね。」
彼は私に微笑んだ。
「そんなこと言うなら、私をこれからもずっと大事にしてください。私を傷つけたと思うんだったら、これからは私を幸せにしてください。」
「そんなこと、俺にできるのかな。」
「できますよ、美礼さんだったら。
それがここまで生かされた使命だと思ってください。」
「使命ね...。」
「美礼さんが好きな言葉でしょう?」
「いいや。
どんな言葉も、お前には意味がないんだな。」
「安心しました?」
「ゆいの、ありがとう。」
それは、私にとっても意味がある言葉なのに...。