お前が好きだなんて俺はバカだな
「うわ...凄い化粧道具...。」

「合コン前はね、こんだけ気合入れるのよ。」

でも、会社のトイレで
こんなことしていいのかなぁ...?

まあ、もう夕暮れ時だしあまり人いないけど。

よっちゃんは慣れた手つきで私に化粧を施していく。

「結野、肌綺麗だね。」

「そう?」

「うん。やっぱ毎晩、御寵愛にあずかっているからだね。」

「もう、またそういう冗談いうー。」

「あながち冗談でもないかもよ。
恋するって、女の子にはとてもいいことなの。外見だけじゃなくてさ、こう、滲みでるものがあるのよ。」

「へー。」

「本当だって。今が1番華だよ。
いいな、うらやましい。」

「よっちゃんのほうが可愛いと思うよ?」

「あらほんと?うれしい。
でもなぁ...例え可愛いとしてもねー。
いざ男と付き合ったりしても割り切れないんだよな。結野みたいに。」

「割り切る?」

「こんなのただの偏見かもしれないけど、合コンとかで知り合う異性はね、何かしら裏があるよ。私もそう。見え張りで結局は年収とかの社会的立場、安定重視。勿論顔もしかりだけどさ。ま、そんなんだから、お互いに不信感募っていって、結局別れちゃう。」

そうなんだ...。

よっちゃんも、普段は明るく自分の恋愛経験について話すけど、本当は気にしてるんだ...。

「ちゃんとお互いに理解しあえる、想いあえるって大切なんだよ。
簡単なことなようで、私には本当に難しい。実はそういうの最近、結野に教わること多いんだ。」

「私はなにも....」

「あんたが課長のこと想う気持ちは、誰も敵わないよ。それは、最近まで同期で隣のデスクで仕事してた私が1番痛感したもん。」

彼を想う気持ち...。

私は、純粋に彼が好きで、どうしても諦めきれなかった。

それがむしろ子どもっぽいって。

そんな心持ちでいたのに。

「でも、私がまた彼とやり直せたのは、よっちゃんたちのおかげだよ。
ありがとう。」

「いいよー、そんな水くさいなぁ。」

「そんな優しくて可愛いよっちゃんだから、きっと素敵な人に巡り逢えるよ。
...なんて、私が言うと変にきこえちゃうよね。単純にそう思ってるつもりなんだけど...。」

「...はー。
ほんと、結野も課長も憎めないキャラ。」

「え?」

「お似合いってことだよ。
そんなこと言ってるうちに、ほら、ほぼほぼ完成。」

「...わ...すごい...!」

「あとは、はりきって仕上げちゃうぞ。」

「うん...。」
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