お前が好きだなんて俺はバカだな
「眠れないの?」

「ん...。」

ベランダで夜空を眺める美礼くんを見つけた。

これだけでも十分絵になる...。

そのままお月様にでも帰っちゃう...?

なんて。

いつ見ても、ほんとに綺麗だから。

「私、こうやって星とかじっくり見ること最近なかったな。」

「こういうのって、さほど変わらないから。」

「私たちって、こんなに広い宇宙に比べれば、ちっぽけなんだよね。」

「そうだね。大きさも、その永さも。
昔は少し違う見方だったけど。」

「違う?」

「ここに見える星の数なんて、ここから目で見たら有限でしかないだろう。
実際そのほうがいいのにって。
なんだか狭くてちっぽけな心だったな。」

「広すぎたんだね。」

「うん。外の世界を見るよりも、自分の限りある居場所が欲しい。認めてもらいたかった。誰かに。」

「私はずっと美礼くんのそばにいるよ。
ここが私たちの居場所。そのことを認めるのは美礼くん自身だもの。」

「そうだな。わがまま言ってごめん。」

「ううん。わがままなんかじゃないよ。
むしろわがまま言ってもいいの。どんなことでも、許しあえる関係になりたい。」

「結野は強いんだな。俺なんかよりずっと。」

「そんなことないよ。美礼くんには敵わない。」

「それが本当ならいいんだけどな。
それでもいいってことだから。」

分かる。

私にはもっと弱くあってほしいって気持ち。

実際はもう十分かよわいんだけどな。

それがもっとって、はやる気持ち、すごくよくわかるし、それが私への想いだっていうことも...。

もはや彼は私がよわくても、なんにもがんばらなくても幸せになってほしいってそんなわがままを...。

ああ、彼は本当にバカ...なんだ...。

「でも、実際にはそうはいかない。
苦労はかけるし、つらい思いだってこれからずっとさせていくんだろうな。」

「まだ後悔してるの?」

「どちらとも。」

「だめだよ。もう後悔しちゃ。」

「分かってる。」

彼はいつも心というものの複雑さを教えてくれる。

彼自身、とても純粋な心を持っているからこそ。

両方が表裏一体になってるっていうすごく難しいことを...。
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