お前が好きだなんて俺はバカだな
「あ...これってエセエセラビットのぬいぐるみ。」

「なんだそれ。」

「知りませんか?
今、女子に人気のエセエセラビット。
売り切れ続出でゲーセンにあるのは期間限定のレアものなんですよ?」

「...キモい。」

「それが可愛いんじゃないですか。
ウサギなのに、深海ザメみたいな目と、もじゃっとした口元と、足がいっぱいあるところとか。」

「そうだな、キモい。」

先輩...。

そんな目でエセエセラビットを見なくても...。

このキモカワ好きの心理は流石の先輩でも分からないかな...。

「これ、欲しいの?」

「...はい。
でも、やっぱりいいです。こういうぬいぐるみってとるの難しいので...。」

「...別に、やればすぐ取れそうだけど。」

「...そうですか?」

先輩は頷いて、さっと、コインを入れる。

「あ...、結構動いた。」

「なんか転がる姿がキモすぎて集中できない...。」

先輩...。

そこまで言わなくてもww

「もう一回。」

「はい。」

...。
ゴトン。

「あ、取れた!」

「キモいし、やるよ。」

「ありがとうございますっ!
あの...。」

「なんだよ。」

「先輩にエセラビ...、似合いますね。」

「は!?」

「なんか先輩が持ってると...可愛いです♡」

「...。」

先輩...。

そんな顔しなくても...。

「ばか、良いから受け取れっ!」

「うわっ!
先輩!
エセラビをこちらに投げないでくださいっ!!」

「うるさい、ばーか。」

「ばかっていうほうがばかなんですー!」

ああ...。

また喧嘩。

でも...。

「ふふふ。」

「...なんだよ。」

「楽しい、です。」

「...。」

先輩はプイっとそっぽを向いてしまった。

あれれ、怒らせちゃったかな...。

「せ、せんぱい...?」

「...。」

「ご、ごめんなさい...。
先輩はエセラビちゃんが似合わない、生粋のイケメンですっ!」

「...。」

うわ...。

先輩がこっちを向いて、私の頭をなでなでしてくれた。

なんか...私、猫みたいにぐるぐるいっちゃいそうだ...。

「...。」

「せんぱい...?」

「やっぱそのうさぎ(?)、

キモい。」

「〜〜〜〜。」

先輩はクスクス笑っている。

もー。

でも、

先輩がこんなに純粋に笑ってくれるとこ、はじめてみた...。

エセラビちゃんは、元は縁結びのお守りとして神社で作られたものが起源...らしい。

から、きっとこれはエセラビちゃん効果だよね。
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