お前が好きだなんて俺はバカだな
「そんなことがあったんですね。
先ほどは、見当違いなことを言ってしまってすみませんでした。」

「いえ、白鳥さんは何も悪くありません。

私が、やっぱり言い過ぎたり、色々しちゃったからいけないんです...。」

わざわざ白鳥さんに遠回りをしてもらって、近くまで一緒に帰ることになった。

私が辿々しく話している時も、白鳥さんは真剣に話をきいてくれる感じがした。

先輩は、白鳥さんのことあんまり好きじゃないみたいだけど、白鳥さんはただ優しい人なんだと思う。

だって、こんなに私の言葉に、耳を傾けて、真面目にとりあって考えてくれるんだから。

「それは違いますよ。美咲さんこそ、僕は何も悪くはないと思います。
一緒に過ごしたいのに、その時間を思わぬところで削られてしまっては、誰だって嫌になってしまいますから。」

「そうですかね...。」

「はい。
美咲さんの気持ちはとてもよく分かります。
焦る気持ちが空回りしてしまうのは、とても辛いですよね。」

「空回り...。」

「さっきは、きっと力になるなんて豪語してしまいましたが...こうして美咲さんの気持ちをきいてあげることしかできないなんて、自分の無力さを痛感します。」

「いえいえ、そんな。
きいていただけただけで、凄くありがたいですし、
嬉しいです。」

「そんなに無理して笑っていては、
辛くありませんか?」

「え?」

「美咲さんと初めてお会いしたとき、とても、幸せそうでした。
その笑顔に僕は励まされて、もっと頑張ろうって思えたんです。」

白鳥さんが...私に...?

「余計なお世話だとは分かってはいるのですが...。それでも...。
僕は、そのときの美咲さんに戻ってもらいたいだけなんです。
そのためなら...僕は...。」

白鳥さんは、すごくまっすぐな目をして私を見つめる。

そんな...見つめられると...。

「なんか、恥ずかしいですね。」

「...え?」

なんか、そんなに真面目に話をきいてもらえるなんて思わなくて。

恥ずかしいような、嬉しいような、なんだか変な気持ち。

自然と、なんだか笑えてきてしまった。

「本当にありがとうございます。
白鳥さん、お優しいんですね。」

「いえ...、そんなこと...。
あの、少しは、お役に立てましたか?」

「はい。
白鳥さんに相談したら、すごく楽になりました。」

「良かったです。
また、何かあったら、お話ししてくださいね。」

「はい。」

白鳥さんの印象、また少し変わったな。

優しいんだけど、

ちょっと世話焼きな部分があるのかな...。

それに、すごく必死...。

でも、それがこの人のいいところなんだろうな。

白鳥さんは、私が元気を取り戻したのを見ると、優しく笑った。

白鳥さんのほうが...
いい笑顔...。
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