カッコウ
何も考えられないまま、時間だけが過ぎていく。

窓の外が白み始めた頃、みどりはぼんやりと立ち上がり、実家へ帰る荷造りを始めた。
 
子供達が目を醒ます前に、孝明は戻って来た。

玄関で迎えるみどり。

憔悴した顔の孝明は静かに、
 
「やっぱり、このままの生活は続けられない。お父さん達と一緒に、離婚に向けて話し合おう。」

とみどりに言った。

みどりは孝明の顔を見ずに小さく頷く。

孝明はどれほど苦しんで、その結論を出したのだろう。

みどりが自分の心配をしている間に。

今になってみどりは、孝明の愛の深さに気付く。

俯いたみどりの足元に涙が落ちる。
 
「ごめんなさい。」

みどりが小さく言うと、孝明はみどりの頭に手を乗せた。

思いがけないぬくもりに、みどりは号泣してしまう。

廊下に立ったまま、掌で顔を覆って。
 
 


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