カッコウ
「大翔、悠翔。大事なお話しをするから、よく聞いて。パパ、仕事で遠くに行くことになったんだ。これから埼玉のお祖父ちゃんの家に送るから。大翔と悠翔とママは3人で、お祖父ちゃんの家で暮らすんだよ。」

起きてきた子供達と、いつものように朝食を食べながら孝明は話す。
 
「えー。僕の学校はどうするの?」 

黙って聞いていた大翔が言う。

「お祖父ちゃんちの近くの小学校に行くようになるよ。」

大翔は小学校入学をとても楽しみにしていたから。
 
「いやだよ。カズ君と一緒の学校がいい。」

拗ねた顔で孝明に言う大翔。 

孝明はどんな思いで大翔に答えているのだろう。
 
「ごめんな、大翔。パパ、すごく遠くに行くから、もうここには住めないんだ。」
 
「遠くってどこ?外国?」

大翔の質問に孝明は頷き、
 
「そう。外国。だから大翔達を連れて行けないんだよ。これからは大翔が、パパの代わりにママと悠翔を守るんだ。できるか?」

孝明は大翔を見つめて、ゆっくり話す。
「パパはいつ帰ってくるの?土曜日?」

大翔も悠翔もパパが大好きだった。

いつも週末にパパと遊ぶことを楽しみにしていた。
 
「すごく遠いから、そんなにすぐには帰れないよ。それに、とても難しい仕事だから、いつ終わるかわからないんだよ。だから、大翔も悠翔も、これからはママの言うことをきいて、なんでも一人でしないと駄目だよ。」

明るく言う孝明に、大翔は渋々頷く。

悠翔もよくわからないまま、大翔を真似て頷いた。
 
みどりは涙を堪えきれずに、そっと席を立つ。

キッチンを向いて水道を流し、嗚咽を消して泣いた。
 
「二人とも、ごちそう様をしたらお祖父ちゃんちに行く用意して。」

孝明は最後までパパでいてくれる。

大翔と悠翔からパパを取り上げてしまったみどり。

孝明の声を聞きながらやっとみどりは実感する。
 
 


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