カッコウ
「大翔、悠翔。パパ、帰るよ。ママとお祖父ちゃん達の言う事、ちゃんと聞くんだよ。」

客間を出た孝明は、子供達に声をかける。

跪いて、二人と目を合わせて。
 
「パパ、いつ外国行くの?」

大翔は寂しそうに聞く。
 
「明日だよ。パパはいつ帰れるかわからないから。大翔と悠翔でママを守るんだよ。」

子供達の頭に手を置いて孝明が言う。

大翔は少し膨れた顔で頷く。

悠翔は何もわからずにニコッと笑って頷く。

孝明が涙を堪えて立ち上がると、
 
「パパ。明日、飛行機の所までお見送りするよ。」

大翔は何かを感じていた。

孝明を見上げて言う。孝明は、
 
「明日は銀行の人がいっぱい来るから。今日、ここでバイバイしようね。」

と言って、子供達二人を抱きしめた。

孝明は最後の別れだと思っていた。

もう一生、子供達には会わないつもりだった。
 
「パパ。なるべく早く帰ってきてね。」

大翔の言葉に孝明は頷く。
 
「大翔も悠翔も、ご飯たくさん食べて、大きくなるんだよ。」

孝明はそう言うと、笑顔で二人の頭を撫でて車に乗った。
 
「パパ、バイバイ。」

と手を振る子供達。

孝明は“プッツ”とクラクションを鳴らして、車を発進させた。
 


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