カッコウ
「俺の前の家族のこと、気にならない?」

まだ若い麻美。

できる限りの不安は取り除いてあげたい。
 
「気になるよ。でも過去も全部含めてタカだから。」

麻美の答えは孝明を驚かせた。
 
「ありがとう。」

麻美の髪を撫でながら孝明は言うと、
 
「それに私だって、タカと知り合う前、何もなかった訳じゃないし。」

と麻美は言う。

確かに20代半ばで知り合えば、何もない人は少ないだろう。

でもそれと離婚歴があることは違う。

孝明は麻美の思いやりに感謝した。
 
「俺、麻美となら何でも話し合える家庭が作れると思う。俺も何でも話すから、麻美も聞きたいことは何でも聞いてね。」

孝明は麻美を抱き寄せて言う。
 
「うん。じゃあ私のどこが好き?」

麻美は上目使いに孝明を見る。
 
「そんな事、言えないよ。」

孝明は照れて口ごもる。
 
「えー。何でも聞いてって言ったくせに。」

と麻美は頬を膨らます。
 
「だから、そういう事じゃなくて。じゃあ麻美は俺のどこが好きなの?」

困った孝明は逆に聞き返す。
 
「私?全部だよ。」

簡単に答える麻美に
 
「なら俺だって全部だよ。」

孝明も真似て言った。

久しぶりの甘い会話。

去年、みどりと別れた時の孝明に、こんな日が来るとは思えなかった。

ただ喪失感と不安でいっぱいだった。
 

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