カッコウ
小さな頃からみどりは明るい性格で友達も多かった。

でもそれはコンプレックスの裏返し。

自分の弱さを隠すためには活発な女の子でいるしかなかった。
 

みどりは自分が“特別”になりたかった。

でも自分には何の才能もない。

勉強も普通。スポーツや音楽も無難にこなす程度。

少しだけ容姿には自信があったけれど、それもアイドルを目指せるほどではない。
 
しかもみどりは目標に向かって、努力することが嫌いだった。

夢中で何かを頑張っている人を“ダサい”と思ってしまう。
 

何かが突き抜けているわけではないみどりが特別な存在になる為には、みんなの一歩前を歩くしかなかった。

まだ誰もやっていないことをすると、みんなはみどりに一目置く。

『みどりは違うから』と言う目で見られることが快感だった。
 
部活動中心の中学時代。みどりの周りには少し派手な子が集まる。

みどりから発散される“進んでいる”空気に引き寄せられて。

そして同じような男子のグループとも仲良くなる。

何をするわけでもないけれど。地味な地方の中学だから。

部活の後、教室で男子と女子がダラダラとおしゃべりをしているだけ。

それだけでも羨ましそうに見られた。
 
その頃は、それだけで満足だった。

みどりの世界が狭かったから。それだけで自分は特別だと思えた。

みどりも周りの友達も、同じように幼かったから。
 


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