カッコウ
異動を告げられた時、孝明は先に名古屋へ行こうと思った。

みどりを労わる気持ち以上に、自分も一人になりたかったから。

まだ20代の孝明には、みどりが少し重くなっていた。

みどりと距離を置いて、家族を見つめ直したいと思っていた。
 

「孝ちゃん、一人で大変だよ。私も一緒に行くよ。」

と言うみどり。

どうせ出産前には実家に戻るのだから。

大きなお腹で引越しをすることはない。

でも少しの間でも、みどりの心を探る日々から解放されたい。

それが孝明の本音だった。
 


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