カッコウ
「大翔は誰の子供なんだ。」

二人が眠った後で、孝明ははじめてみどりに問う。

硬く凍った表情でみどりを見つめて。
 
何も言えないみどり。

長い沈黙の後、孝明はもう一度聞く。
 
「大翔の父親は誰なんだ。」

こんな時でも孝明は声を荒げずに静かに聞く。

俯いたまま何も言わないみどりに、
「どうするつもりなんだ、これから。」

孝明の言葉は、矢のようにみどりを刺す。
 
「俺は大翔も悠翔も同じ様に可愛かった。自分の子じゃないなんて思ったこと、なかったから。ひどいな。」

静かに言う孝明の言葉は深くみどりに突き刺さる。

傷付いているのは孝明なのに。
 
「ごめんなさい。」

震える声で、みどりはやっと一言答える。
 
「本当のことなんだね。みどりは知っていたんだ。信じられないよ。」

孝明も頭を抱えて俯く。

こんな時でも、子供達には同じように接してくれた孝明。

夜は二人をお風呂に入れて。

最後まで父親でいてくれた。

もう取り返しがつかない。
 

< 98 / 137 >

この作品をシェア

pagetop