からふる。~第9話~
スペアキーで私が扉を開け、青波先輩がカラスくんをベッドに寝かせた。



「最悪だ。コイツに邪魔された...」


「あのあの、青波先輩」


「何?」



見つめられると、その瞳の奥にある深い海の底にしずんでしまいそう。



「お、お付き合いは...その...まだ考えられないです」


「まだってことは数ヶ月後にはチャンスあるってこと?」


「あっ、えっ...あ、はい」


「それ本当?」


「チャンスはどの男性にも平等にあると思います」



うん、いい答え。



「そっか...そっか...そっか!じゃあ俺諦めないよ。絶対もう1度紗彩にコクるから。それまでは誰とも寝ないし、誰とも遊ばない。紗彩に見合う清廉潔白な男を目指す」



清廉潔白、か...。


色々してるみたいだけど、大丈夫でしょうか?



「紗彩」


「はい」


「俺のこと、凪砂って呼んで」


「いや、それは...」


「じゃあ、凪砂先輩。はいっ」


「な、な、なぎ...凪砂先輩」


「ありがとう。良くできました。じゃあ俺は筋トレして風呂に入るからこれで。また明日ね」



あっ、えっ...。


行ってしまった。


ほんとすごい人。


自分の欲を満たすために生きてるって感じだ。


だけど、こんな時間から筋トレするくらいだから真面目だし、努力家なんだよね。


ちょっとまだ警戒心は拭いきれないけど、誠実に告白してもらったし、色眼鏡で見ないようにしよう。


さて...。


私も帰りますか。



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