からふる。~第10話~
黒羽くんのお菓子を頂きながら話すこと10分。


ようやく過去を話しきった。



「さあやは元お嬢様か。通りで雑巾もぶん投げるわけか」


「そ、それは...」


「おれが教えてやるよ。掃除は得意なんだぜ」



そうにはみえませんが...。



「明日からおれも掃除やるわ。実はさ今日もやろうとしてたんだよ。ホウキ持ってさあやを待ってて、来たなぁって思ってツンツンしたらああなるし。いやぁ、ホントごめん。おれ回りが見えなくなるんだわ。目の前のものを守るのに必死でさ。直さねえとなぁ」



黒羽くん、すごいじゃん。


ちゃんと自分のことを分かってる。


ここまで自己分析出来る人なかなかいないよ。


私の方が子供かも。



「よしっ。じゃあ約束する」


「約束?」


「おれがさあやの親友になる」


「親友って私が黒羽くんを親友だって認めて初めて親友になるんだよ。黒羽くんの一存では決められないよ」


「別にいい。絶対にさいっこーの友達になれる自信がおれにはある。さあやが今まで悲しんだ分、おれが笑顔にする。ぜってえ泣かせねえから。たとえさあやが泣いてても3秒後には笑わせるから。約束だ。ってことで、はい。指切りだ」



小指を絡ませることを強要するこの方、かなり意味不明です。


拒んでもしょうがないから私より長くて太い小指に絡ませる。



「よし、約束完了!で、おれから将来の親友になるさあやに1つお願いがある」


「お願い?」


「普通のメシを食えるようになりたいから美味しい料理を頼む!」



そんなこと思ってたんだ。


お菓子で人生終わっていくのかと思ってた。



「いやぁ、桃の家庭が由緒正しきお家柄でさ、お菓子食ってる男を許してくれなさそうなんだよな」


「それはどの方もそうだと思うけど」


「そう...か。さあやも?」


「うん」


「じゃあマジで直す!頑張って食えるようにする!」



それにしてもよくここまで生きてこられたね。


お菓子だけだから栄養も偏ってるだろうし、体も細い気がする。


青波先輩はがっしりしてたもんなぁ。



「さあや」


「何?」


「改めてよろしくな。2日間のことは忘れてくれ。おれが狂ってた。ま、おれを狂わせたのもさあやだけど」


「えっ?」


「とにかくよろしくな」


「あ、うん。よろしく」



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