【番外編5/3UP】その王子、はらぺこ悪魔につき。


(た……)




タスクを呼ぼうとして、



呼べなかった。



――背後から、口元を手で覆われたから。



いつの間に、わたしのうしろに回り込んだの?


どこから、来たの?



…………黒羽根くん。



「……っ」
「声、出さないで」



消えそうな声で、耳元で、囁かれた。


言葉が、出せない。


冷たい。


まるで氷のマスクでもつけているようだ。


黒羽根くんが、


「……?」


わたしのブラウスの胸ポケットに手を突っ込んでくる。


なに?


そこから取り出したのは――


(……キレイ)


パープルの、包み紙。


どこかで見たような……。


「チョコレート。美味しかった?」


チョコレート?


「もう一度。食べさせてあげようか」


――食べさせる?


「……といっても、覚えてないよね。騒がれても困るからデリートしてある」
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