最強の魔女と策士な伯爵~魔法のランプをめぐる攻防~
「実力行使に出てもいいのよ。誤って発送してしまったのは悔しいけれど……わたくしの非だと認めざるを得ないけれど! わたくしにはランプを作った責任がある。危険な物を人間の手に預けておけないの。貴方にそのランプの価値が理解出来て?」

「色々と実験済みだ。実力行使と言っていたが、さて……お前はランプの精に勝てるのか?」

「なん、ですって?」

 挑戦的な質問だ。もちろんそれに見合う眼差しを向けられ、メレは信じられないという表情で硬直していた。

「まさか、わたくしに喧嘩を売っている? わたくし喧嘩を売られているの?」

「面白いことを言う女だ」

 この発言に、激しい苛立ちを覚えた。それを面白そうに見守っている精霊と、その主人にはさらに腹が立つ。
 驚きに戸惑い、苛立ちを重ね。先の発言を頭が完璧に受け入れた時、沸き上がるのは高揚だった。

「面白い? それはわたくしの台詞よ。喧嘩を売られるなんて久しぶりで驚いたわ。身の程知らずはもう、身内にいないものだから」

 身内とは、すなわち魔女である。メレの魔法の実力を知って喧嘩を売るような相手は少なかった。その才能に、秘めた力に、最強の魔女として現在も君臨し続けるメレである。
 そもそも身内自体少ないのだが、そこまで親切に説明してやる義理はないだろう。

「そんなに返してほしいのなら、勝負をしないか?」

「勝負?」

「お前、このまま引き下がるつもりはないだろう」

「当然ね。回収する義務があると言ったでしょう」

「俺だって渡すつもりはない。さあ、どうする?」

「決まっているわ。実力行使で取り戻す。わたくしにはそれだけの力があるもの」

 すぐにノネットを下がらせた。実力行使を宣言した以上、次の瞬間には何が起こるかわからない。たとえ光の雨が降り注ごうと、メレは自分とノネットを守りきるつもりだ。
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