最強の魔女と策士な伯爵~魔法のランプをめぐる攻防~
「怖い女だ。強気な瞳に苛烈なことで」

「余計なお世話よ」

「なら俺も自分の身を守らなければならない。辺り一面火の海にして撃退してもいいんだぜ?」

 物騒な発言が飛び出すにもかかわらず、メレは想定内だと言わんばかりである。

「やって御覧なさい。大洪水に陥る雨で鎮火してさしあげる」

「そんな雲、直ぐに吹き飛ばせる」

「その風で竜巻を起こそうかしら。遠くまで吹き飛んでしまいなさい。背後のご自宅までさぞボロボロになることでしょうね」

「家くらい一瞬で直せるが」

 お前の作ったランプでな――

 皆まで言わずとも感じ取れるのが憎らしい。
 なおも口頭魔法合戦は止まらず、白熱を極めていた。

「なんて嫌味な人間なの! 悪いのはわたくしだからと謙虚に出た自分が馬鹿みたい。水、いいえ温い! 氷水でも浴びて心を入れ替えなさい! もしくは今すぐ海に突き落としてやりたい。無論深海まで沈めてくれるわ!」

「遠慮しておくが、なんだ俺と海に行きたいのか? それなら絶景のポイントを確保してやらなくもない。気候も程良く南国に変えてやろう」

「氷河期にするからそのおつもりで。氷に頭でもぶつけて考えを改めることね」

「氷山見物とは風流だな。よし、観光名所に仕立て上げよう。領地がさぞ潤うだろうな、感謝するぜ」

「随分と耳が悪いのね。あまりにも可哀想だからわたくし特製の薬を処方してあげてよ。代金はランプで結構」

「親切感謝するが、健康は俺の取り柄だ」

 もはやただの口喧嘩。だが怖ろしいことに、彼らは実行に移す力を持っている。

「ほらな、埒が明かない。いくらランプの力で追い払おうと、お前も同じことができるわけだ。だからといって取り返そうと付きまとわれても迷惑だ」

「迷惑ですって!? それはわたくしの台詞よ取らないで。貴方が素直に返却すればよろしいの!」

 口を尖らせ反論すれど、内心では同じ考えに至っている。そう、埒が明かないのだ。

「だからこそ、勝負で決着を付けないかと提案したい」

「それは、わたくしを偉大な魔女メレディアナ・ブランと知っての発言? ランプはきちんとわたくしのことを教えてくれたのかしら」

 たとえ背の高い相手だろうとメレは負けずに見返した。
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