最強の魔女と策士な伯爵~魔法のランプをめぐる攻防~
「そうだ! 良ければメレディアナ様も召し上がってくださいませんか?」
どうしてそうなったのか、まるっきり脈絡のない返しに戸惑った。
「私お菓子作りが趣味なんです。ねえお母様、お兄様を見なかった?」
「オルフェなら席を外しているわよ」
それを聞くなりカティナはムッと頬を膨らませた。
「もう! 久しぶりに私の作ったケーキが食べたいなんて言うからせっかく作ってあげたのよ。それなのにどこかへフラフラと行ってしまうなんて、冷めてしまうわ! だから食べ手を探しているんです」
「カティナ、いきなり失礼よ」
「いえ、構いません」
あれほど警戒していたはずが自分でも驚くほどすんなり了承していた。
断れなかったのだ。目の前でキラキラと瞳を輝かせる少女相手には。
「やった! ありがとうございます!」
飛び上がらんばかりに全身で喜びを表現する。
どこで見ていたのか、なんてタイミングのいいことにオルフェがケーキを運んできた。生クリームでコーティングされたケーキには小ぶりの苺がたっぷり飾られている。
「……ありがとうございます」
カティナの歓喜に対して、メレは引きつった棒読みである。
(まさか妹を使って毒殺を企てたりしないでしょうね?)
そんな意図を込めて視線を送れば「なんなら毒見しましょうか」と耳打ちされた。
メレの杞憂など知りもしないフィリアは既に食べ始めている。
「カティナったら、また腕を上げたわね。とても美味しいわ」
「やった! お母様、ありがとう」
冷静に考えてみれば母親も食べるつもりでいたのだ。毒が入っているわけもない。普通に美味しいケーキだった。
「わたくしも美味しくいただいております」
けれどカティナは浮かない顔をしている。
「でも私、もっと上手くなりたくて……」
「僭越ながら、もっと空気を入れるように混ぜたほうがよろしいのではありませんか?」
クリームで誤魔化されてはいるがスポンジの膨らみが足りないように思う。そう考えて自然と言葉を発していたのだ。
メレの発言に驚いたのか、親子揃って目が丸くなっている。やがて立ち直ったカティナは嬉々として叫んだ。
「メレディアナ様、博識なのですね!」
「いえ、それほどのことでは……。わたくしも嗜む程度ですが作ることがありますので」
「まあ! 他には、他に直すところはありますか!? 遠慮なくおっしゃってください。ああ、なんて頼もしいのかしら!」
メレが親身になって答えれば、親子は真剣に聞き入ってくれた。
彼女たちとの会話に裏は感じられず、おかげでメレはついうっかり楽しい一時を過ごしてしまったのである。
どうしてそうなったのか、まるっきり脈絡のない返しに戸惑った。
「私お菓子作りが趣味なんです。ねえお母様、お兄様を見なかった?」
「オルフェなら席を外しているわよ」
それを聞くなりカティナはムッと頬を膨らませた。
「もう! 久しぶりに私の作ったケーキが食べたいなんて言うからせっかく作ってあげたのよ。それなのにどこかへフラフラと行ってしまうなんて、冷めてしまうわ! だから食べ手を探しているんです」
「カティナ、いきなり失礼よ」
「いえ、構いません」
あれほど警戒していたはずが自分でも驚くほどすんなり了承していた。
断れなかったのだ。目の前でキラキラと瞳を輝かせる少女相手には。
「やった! ありがとうございます!」
飛び上がらんばかりに全身で喜びを表現する。
どこで見ていたのか、なんてタイミングのいいことにオルフェがケーキを運んできた。生クリームでコーティングされたケーキには小ぶりの苺がたっぷり飾られている。
「……ありがとうございます」
カティナの歓喜に対して、メレは引きつった棒読みである。
(まさか妹を使って毒殺を企てたりしないでしょうね?)
そんな意図を込めて視線を送れば「なんなら毒見しましょうか」と耳打ちされた。
メレの杞憂など知りもしないフィリアは既に食べ始めている。
「カティナったら、また腕を上げたわね。とても美味しいわ」
「やった! お母様、ありがとう」
冷静に考えてみれば母親も食べるつもりでいたのだ。毒が入っているわけもない。普通に美味しいケーキだった。
「わたくしも美味しくいただいております」
けれどカティナは浮かない顔をしている。
「でも私、もっと上手くなりたくて……」
「僭越ながら、もっと空気を入れるように混ぜたほうがよろしいのではありませんか?」
クリームで誤魔化されてはいるがスポンジの膨らみが足りないように思う。そう考えて自然と言葉を発していたのだ。
メレの発言に驚いたのか、親子揃って目が丸くなっている。やがて立ち直ったカティナは嬉々として叫んだ。
「メレディアナ様、博識なのですね!」
「いえ、それほどのことでは……。わたくしも嗜む程度ですが作ることがありますので」
「まあ! 他には、他に直すところはありますか!? 遠慮なくおっしゃってください。ああ、なんて頼もしいのかしら!」
メレが親身になって答えれば、親子は真剣に聞き入ってくれた。
彼女たちとの会話に裏は感じられず、おかげでメレはついうっかり楽しい一時を過ごしてしまったのである。