最強の魔女と策士な伯爵~魔法のランプをめぐる攻防~
「お初にお目に掛かります。わたくしメレディアナ・ブランと申します。今宵はイヴァン伯爵のおかげで参加の栄誉を賜りましたの」
本当に、彼のおかげで。そう考えるだけで疲れが押し寄せる。
「オルフェが? おっと、これは失礼しました。名乗り遅れて申し訳ありません。エセル・シューミットです」
エセルは食い入るようにオルフェを見つめていた。何か信じられない物でも見ているような驚きである。やがてメレに向き直れば、明らかに好奇心宿る眼差しであった。
「メレディアナ嬢はエイベラにいらっしゃるのは初めてですか?」
友人が連れている見知らぬ存在に興味が湧いたとみえる。
「昔の話ですが、仕事で何度か訪れましたわ」
「仕事ですか?」
「わたくし個人で商会を営んでおります。『賢者の瞳』をご存じでしょうか?」
「これは驚いた! 私の親族にもファンが大勢いて、まさかこんなにお若い女性が営んでいたとは」
エセルは興奮ぎみに詰め寄り握手を求めるが、そんな彼の動きを阻止する者が現れた。
「ちょっとエセル! いつまで待たせるの!?」
キンと張り上げられた呼びかけにエセルが顔をしかめている。
「ああ、ごめん。もう少しだから」
婚約者であるレーラがつまらなそうに眉を寄せていた。金髪に翡翠のドレス、胸元はこれでもかと豪勢な宝石で彩られている。きつい眼差しでエセルを睨んでいたが、オルフェを目に留めると不敵に唇を歪めた。
「まあ、オルフェと一緒でしたのね。お久しぶりね。お元気かしら?」
「ああ」
お互いついでのような挨拶に張りつめた空気を感じた。
しかし何故こうも次々とオルフェ関係者に囲まれているのか。早く立ち去りたいと願えど、エセルは遠慮なしに提案を持ちかける。
「そうだ、よければ少し話しませんか? ちょうど遠方から取引相手が来ているもので。ああ、噂をすれば! 『こっちだ!』」
最後に放たれたそれはこの国の言葉ではない。唯一反応を示した男が手招きに応じる。
「いま通訳を」
申し出たエセルをさしおいてメレは自ら話し始めた。
『初めまして、メレディアナ・ブランと申します。お会いできて光栄です』
流暢に話すメレに周囲は息を呑む。
「君、話せるのかい?」
「仕事で使うこともありますので、一通り勉強しています」
メレが扱える言語は他国のものから失われた時代のものまで幅広いのだ。
本当に、彼のおかげで。そう考えるだけで疲れが押し寄せる。
「オルフェが? おっと、これは失礼しました。名乗り遅れて申し訳ありません。エセル・シューミットです」
エセルは食い入るようにオルフェを見つめていた。何か信じられない物でも見ているような驚きである。やがてメレに向き直れば、明らかに好奇心宿る眼差しであった。
「メレディアナ嬢はエイベラにいらっしゃるのは初めてですか?」
友人が連れている見知らぬ存在に興味が湧いたとみえる。
「昔の話ですが、仕事で何度か訪れましたわ」
「仕事ですか?」
「わたくし個人で商会を営んでおります。『賢者の瞳』をご存じでしょうか?」
「これは驚いた! 私の親族にもファンが大勢いて、まさかこんなにお若い女性が営んでいたとは」
エセルは興奮ぎみに詰め寄り握手を求めるが、そんな彼の動きを阻止する者が現れた。
「ちょっとエセル! いつまで待たせるの!?」
キンと張り上げられた呼びかけにエセルが顔をしかめている。
「ああ、ごめん。もう少しだから」
婚約者であるレーラがつまらなそうに眉を寄せていた。金髪に翡翠のドレス、胸元はこれでもかと豪勢な宝石で彩られている。きつい眼差しでエセルを睨んでいたが、オルフェを目に留めると不敵に唇を歪めた。
「まあ、オルフェと一緒でしたのね。お久しぶりね。お元気かしら?」
「ああ」
お互いついでのような挨拶に張りつめた空気を感じた。
しかし何故こうも次々とオルフェ関係者に囲まれているのか。早く立ち去りたいと願えど、エセルは遠慮なしに提案を持ちかける。
「そうだ、よければ少し話しませんか? ちょうど遠方から取引相手が来ているもので。ああ、噂をすれば! 『こっちだ!』」
最後に放たれたそれはこの国の言葉ではない。唯一反応を示した男が手招きに応じる。
「いま通訳を」
申し出たエセルをさしおいてメレは自ら話し始めた。
『初めまして、メレディアナ・ブランと申します。お会いできて光栄です』
流暢に話すメレに周囲は息を呑む。
「君、話せるのかい?」
「仕事で使うこともありますので、一通り勉強しています」
メレが扱える言語は他国のものから失われた時代のものまで幅広いのだ。