最強の魔女と策士な伯爵~魔法のランプをめぐる攻防~
「はいはい、ここまで聞いてくれて感謝するよ。だから俺の家に避難しろと言っている。あいつも手が出しにくい」

「わたくしが人間の男相手に遅れを取ると?」

「気を悪くさせたなら謝る。だが人前で堂々と魔法が使えるわけじゃないだろ。魔女だとばれて困るのはお前だ」

 オルフェの指摘は正しい。魔女の存在は極秘でなければならない。

「助言は素直に聞き入れるわ。付きまとわれる可能性がある、というのなら迷惑この上ないことね。ここが知れているなら宿を手配するだけよ」

「金の無駄だろ。その点、俺の家ならタダで済む」

「貴方の存在が気に入らないもので」

 わざわざ言わせるなと非難の視線を送る。敵と同じ屋根の下? 落ち着かないに決まっている。

「別に同じ部屋で寝ろとは言ってないだろ」

「そうだとしたら絶対に行かないわ。宿くらい自分で手配出来るもの」

「全室満員にしておこう」

「……嫌な男」

 やはりこんな男にランプを与えてはおけない。

「わたくしの親切を無駄にしないでいただける。貴方が良くても貴方の家族は良く思わないはずよ」

 他人が屋敷に入りこんで気分がいいわけない。あんな恋愛事情を聴いた後なら尚更だ。

「母も妹も、お前のことは気に入っている。お前はどうだ?」

 だからこそだ。せっかく良い話し相手ができて嬉しかったのに、また悪い虫がついたなどと思われたくはない。けれどオルフェが世辞を言うとも思えない。

「……フィリア様は、素敵な方ね。お優しくて、親しみやすい人よ。カティナ様は、可愛らしい方。女の子の夢を詰め込んだような、甘い子。でもそこが可愛らしいわね」

 とてもオルフェの身内だとは思えないほどメレも心を許していた。

「なら、問題ないだろう。どうせ俺たちはまた会う運命なんだ」

 響きだけならロマンチック。でもそんな言い回しをしては詐欺だ。

「仕組まれた運命ね」

 誤解を招かぬよう訂正する。所詮、勝負のために会うだけの間柄なのだから。
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