最強の魔女と策士な伯爵~魔法のランプをめぐる攻防~
乱入者たち
 レーラの案内するタウンハウスに着くまで。到着してから着替えが終えるまで。さらには温かいお茶を差し出されてもレーラとの会話は最小限だった。正直息が詰まりそうだ。

「レーラ様も祭りに参加されていたのですか?」

 メレが問うも視線が重なることはない。

「ミゼリス家としてはチャリティーに参加していますわね。でもわたくし、お祭りってあまり好きではないの。立ってばかりでしょう? それなのに舞踏会のように着飾って楽しむこともできないし、庶民に紛れて人ごみを歩くのも苦手。どうしてこんなことをしなければならないのかしら……。朝からイベントに駆り出されて疲れてしまったわ」

 またしても話題選びに失敗した模様。一方的にまくし立てられ言葉の続く余地もない。

「そうですか……」

「メレディアナ様は随分と楽しまれていらっしゃるのね。オルフェとのダンス、見ていましたわ。まさか噴水に落ちるとは思いませんでしたけれど」

 レーラは口元を隠すように笑う。そう、これこそが本来あるべき令嬢の姿。それをあの失態と合わせて大笑いから見られていたなんて、仮にも同じ令嬢として思うところはあった。

「ねえ、メレディアナ様。わたくしずっと聞いてみたいことがありましたの」

「なんでしょう」

 そっけなかったレーラからの疑問に事態の好転を求めたい。

「貴女オルフェが好きなのかしら」

(どんな質問……)

 メレはがくりと首を垂らす。

「あの、レーラ様。どうしたら、そのような質問に至るのでしょうか」

「オルフェが女性を傍に置くなんて珍しいからよ。パーティーからずっと気になっていたの。でもね、一つ忠告。彼ってつまらない男よ」

「つまらない?」

 退屈とは無縁の日々を送らされたのでメレは疑問を抱く。

「そうでしょうか」

「だって、わたくしのお願いを叶えてくれないの。宝石もドレスも、ちっとも買ってくれないわ。そんな人の妻になったって退屈でしょう」

 同意を求められても頷く気になれなかった。
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