Keeper.ll
BAR、【DESPAIR】
despair……絶望。
『自分のセンスのこと指してるの?このバーは。』
OPEN と扉にかけられた木札を確認して、取っ手に手をかける。
開けば薄暗い小洒落たバー。
そしてオーナーの
「里香ちゃぁん!いらっしゃぁい」
オカマ。そう、オカマである。
見た目は普通のイケメン。優しそうな顔のイケメン。なのに性格はオカマ。
何度も言おう、オカマなのである。
だけど実はすごい人。
『お久しぶりです、希望さん……、』
「久しぶりじゃない!元気でやってたの?あんた全然連絡してこないんだから!心配したじゃない!!」
見た目は男なのに口を開けばオカンのようなことを言い出す。
雨宮希望。
オカマで【DESPAIR】というバーの店主である。
お客さんは居ない。従業員も希望さんだけ。カウンターからこちらへと向かってくる。
そして。
「ほんと、久しぶりねぇ♡
…………体、訛ったんじゃない?」
予備動作一切無しでこちらへと刃物を突きつけてくる。
ピタリ、と首に当てられる銀色のナイフ。冷たい。
『かも、しれないですね……』
「かもじゃないわよ?
…………あまり、あたしを絶望させないでくれないかしら?」