好きって、むずかしい。
プロローグ
1
「やっと卒業したー!」
桜が舞い散る昼下がりの並木道で、4人の男女が歩いている。
4人は胸に赤い造花を付けており、それはまさに今日、彼らが中学校を卒業したことを意味していた。
「サラ、はしゃぎすぎ」
1人の少年がそう声をかけると、飛び跳ねながら卒業を喜ぶサラと呼ばれた少女は、振り返って意気揚々と叫ぶ。
「だって隼瀬。終わったのよ、中学。来月から高校生なんだよ? ねえ、優奈!」
優奈、と声をかけられた少女は優しく笑って、サラに同意する。
「そうだね、やっと終わった。来月から新生活だし、これからみんなで住むんだもんね」
「そうだよー!」
雪のように白い透き通るような肌。
すっとした真っ直ぐで綺麗な鼻筋に、まつ毛の長い大きな薄茶色の瞳。
ほのかに色を宿す唇。
優奈の容姿は他の誰から見ても、かわいいと絶賛されるものだった。