好きって、むずかしい。
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「そういえば優奈、結局高校どこ? お前俺たちには最後まで教えてくれなかったろ」
隼瀬と呼ばれた黒髪の少年が、優奈にそう声をかける。
優しそうな瞳をしていて、顔立ちは普通よりもかなり整っている方だ。
「それ本当知りたかった、私も聞いてないもん。恭成にも言ってないんでしょ?」
「……聞いてねえよ。お前本当俺の事信じてないのな」
恭成と呼ばれた少年は、ため息をつきながらサラにそう返す。
恭成は卒業までにサラと隼瀬から何度も優奈の進学先を聞かれ、その度に知らないと答えていたからだ。
「だって、恭成は優奈のことならなんでも知ってるじゃない」
「勝手に決めんな」
「ほんとあんた顔とスタイルだけだよね」
モデルのように長く細い足と、小さな顔。
風にさらさらとなびく白に近いシルバーの髪。
端正な顔立ちをしており、両耳にはひとつずつピアスを付けている。
芸能人顔負けのルックスを持つ恭成は、サラと口論になる度にそれをネタとして扱われていた。
「2人とも喧嘩やめて。別に言わなかったことには大して理由ないから」
優奈は慌てて2人に言う。
「で、結局どこなのよ?」
サラが痺れを切らしたように聞く。
優奈が一瞬の間を開けて、ゆっくりと告げる。
「…上西実業」
その瞬間、恭成が驚いて目を見開き、サラと隼瀬が顔を見合わせた。