好きって、むずかしい。
3
「……やっぱりあんたたち、どっかで繋がってるのかもね」
「え?」
サラの言葉に、優奈がきょとんとした顔で首を傾げる。
「恭成も上西なんだよ」
サラの代わりに隼瀬が答える。
優奈はびっくりして恭成を見た。
恭成は頭痛に悩まされているかのような苦い表情をして、顔を手で覆っていた。
「絶対被らないと、思ってたのに」
「……俺も。被らないと思ってた」
優奈の消え入るような声に、恭成もため息をつきながら返す。
2人ともある事情から、絶対に誰とも被らない高校を選択したつもりだった。
「何? そんなに嫌なの?」
サラが怪訝そうに2人の顔を覗き込む。
「……いや。別に」
恭成はいつもの無表情に戻り、素っ気ない言葉を吐き出した。
「……ごめん、恭成」
「……何が。別にいい」
「でもシェアハウスのことも結局、私のせいで__」
「優奈」
優奈以外の3人の声が重なった。
3人に同時に名前を呼ばれた優奈が、不安に揺れる瞳を見開く。
「それは、言わない約束でしょ」
サラが苦しそうな笑顔で、絞り出すようにそう言った。
『__佐伯さんは、そんなことしません!』
優奈の脳裏に、ある日の記憶が蘇ってくる。
記憶の中で自分を庇うため声を荒らげるサラと今のサラは、同じ顔をしていた。
「……ごめん。もう何も言わない」
優奈は無理やり笑顔を作り、3人に笑いかける。
途端に、3人がほっと安心したような顔をした。
「よーし! 4人暮らし楽しみだなあ」
「でも正直今でも4人暮らしみたいなもんじゃん。サラ全然食器洗わねえけど」
「お前が甘やかすからだろ。俺と優奈は洗ってる」
やがて楽しそうに会話する4人の影は、桜の舞い散る暖かな春の空気にゆっくりと溶けていった。