カッコウ Ⅱ
大翔が両親の離婚について、きちんと聞いたのは、小学校4年生の時だった。

悠翔の入学式の夜、みどりは
 
「お父さんとお母さん、離婚したの。だから、もうお父さんは来ないのよ。」

と大翔と悠翔に言った。薄々感じていたけれど、はっきり言われて大翔はショックだった。
 
「どうして。お父さん、仕事終わったら来るって言ったじゃない。」

大翔が聞くと、
 
「仕事がいつ終わるかわからなくて。ずっと外国にいることになったの。」

みどりは大翔から目を逸らして言う。
 
「だいたい外国ってどこなの?電話も手紙も来ないっておかしいよ。」

大翔が聞くと
 
「アメリカよ。時差があるから、なかなか電話できないのよ。」

みどりは小さく言う。
 
「僕、お父さんに会いたいよ。会ってちゃんと聞きたいよ。」

大翔は目に涙を浮かべる。

孝明と会えなくなって3年。何となく気付きながら、それでも孝明を待っていた。
 
「ずっと日本に帰らないから。会えないのよ。ごめんね。」

みどりは目を伏せたまま答える。
 
「ひどいよ。僕達に何も言わないで決めるなんて。家族なのに。」

大翔の目から涙が溢れると、みどりも目を潤ませて、
 
「ごめんね。でも決めたことだから。ヒロ達は、このままここで暮らすからね。」

と言った。そして、それ以上の説明はしてくれなかった。
 
孝明のことを覚えていない悠翔は、みどりの言葉に何の疑問も抱かない。

今までと生活は変わらないから。

ずっと仲が良かった悠翔を、この時初めて大翔は憎んだ。
 


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