ウチの塩が切れました。
はじめて聞いた。少し怒ったような、悲しんでるような塩崎くんの声。
冷たそうに見えることはたくさんあっても、こんな風にマイナスの感情を外に出してるの、見たことない……。
「そんなに迷惑?」
「違っ、」
「莉心は覚えてないかもしれないけどさ、」
違う、と言おうとしたところで遮られた。聞きたくなかったのかな、もしかして。
……もう、私の声なんて聞きたくない?
「“まーちゃん”。聞き覚えない?莉心にそう呼ばれてたんだけど」
「え……?」
まーちゃん、
まーちゃん、
まーちゃん、
………あ、
いや、でも……
「私の知り合いのまーちゃんって、女の子だった気が……」
「……やっぱり。俺、女だと思われてたか」