私の仮恋人は親友のお兄さん

花音の恋

「ここで待っていれば
会えると思ったわ」

正門前に立っていた秘書さんが
笑顔で話しかけてきた

これから授業があるんだけどな

そう思いつつ
私は秘書さんの車に乗った

「あの…
仕事は?」

「部署が異動になったの
秘書課から
宣伝部門長になったわ
昇進とも言えるけど
左遷とも言えるわね

きっとあなたのせいよ」

車に乗った秘書さんは
煙草を吸った

その匂いが
廉人さんの匂いを重なった

まさか?

「昨日、廉人さんに会いました?」

「店に行っただけよ
ホテルに連れ込もうとしたけど

拒絶された
こんなこと一度もなかったのに

これもあなたのせいね」

「憎んでますか?」

「憎んでいるわ

でも羨ましいとも思っている」

「私と何の話をしようと
思っているんですか?」

「何にも
本当は連れまわして
社長のおどおどする姿を見たいと
思ったけど

やめたわ」

「なぜ?」

「あなたと私、
全然、違うもの

私はあなたに負けてない

顔もスタイルも

私のどこに欠点があるのか
わからないわ

だから卑劣な行為をして
自分の地位を
貶めたくないわ」

麗華さんとは真逆な性格の人だ

「だから今日は
あなたとドライブして

あなたのどんなところに
社長が惹かれたか

見てやろうと思ったのよ」

「意外とサバサバしているんですね」

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