私の仮恋人は親友のお兄さん
思い出してみると

廉人さんの会社で
「結婚しよう」みたいな
ことを言われたような…?

「私はもうちょっと自由でいたい

廉人さんと一緒にいるのは
心地よいけど

結婚ってより恋人でいたいよ」

「そう言うと思った

でも将来のことを考えなよ~
兄貴はもうおっさんに片足突っ込んでるんだから

子作りは早めがいいよ」

果恋は片目をつぶった

「花音さん?」

急に背後から
麗華さんから
声をかけられた

振り返ると
大きな荷物を持っている
麗華さんがいた

今日で
麗華さんは学校を去るのだ

父親の倒産で
授業料が払えなくなった麗華さんは

学校を辞めて
瀬戸内くんと一緒に暮らすらしい

瀬戸内くんの両親には
反対されているみたいだけど

瀬戸内くんと交際しているらしい

「今まで
申し訳なかったわ

ここ私の新しい家よ
近くに来たら、寄って頂戴」

麗華さんが新住所を渡してくれた

今まで厳しい目つきだった麗華さん

今はとっても優しい目になっていた

「ありがとう
ときどき遊びに行くね」

「ええ
楽しみに待っているわ」

麗華さんは重たそうな荷物を持って
教室を出て行った

教室を見ると
誰も
麗華さんを見送ろうとする人はいない

金魚のフンのように
あとをついていた取り巻きも
麗華さんを無視していた

麗華さん
きっとずっと
寂しかったのかもしれないな

誰も麗華さんを
心から理解してくれる人がいなかったんだ
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