私の仮恋人は親友のお兄さん
「けっこう時間がかかったな
あとは明日だな
車に乗れ
家まで送る」
明日…
明日は何をするのだろう
またポンと大金を私のために投げだしてしまうのだろうか?
「あ…と
私、電車で帰れますから」
私は深々とお辞儀をすると
廉人さんに背を向けた
これ以上は
迷惑をかけられないから
美容院代だけで
私の心はちくちくと棘が刺さって痛いよ
誰かに自分のお金を払ってもらうなんて
今までしてもらったことがないから
どうしていいか
わからないの
迷惑なんじゃないか?
もしかしたら
苛々しているんじゃないか
俺の金を使いやがって
…思われてるんじゃないかって
不安でたまらなくなる
「良い女は家の近所まで
男を送らせるものだ
逆に家まで送らない男は
良い男ではないってこと」
駅に向かって歩き出そうとする
私に
腕を掴んで引きとめた廉人さんが説明した
『良い女』のあり方
『良い男』のあり方
私には難しいかな……