夏色メモリー【完】
元から仲良かったならまだしも、最初に電車で出会った時の私と川藤くんは、喋ったことのない、ただのクラスメートだった。
「実際、話しかけるのも迷ったし。でも、今は話しかけて良かったと思ってる。俺の知らなかった矢野さんの一面が見れたわけだし」
「私も。川藤くんがこんなに話しやすい人だとは思わなかった」
いつもクラスの中心にいて。
クラスを率先して盛り上げていて。
そんな人が私に構ってくれるなんて、夢のようなひと時だった。
でも、川藤くんもそう思ってくれていたってことは夢じゃないんだよね?
「夏休み明けもよろしくね」
「うん、よろしく」
そうして、私と川藤くんの高校2年の夏は幕を閉じた。