ナルシス
こんなに寂しいのに。

誰にも言えずに。

悪ぶって生意気なことを言って。

でも誰にも救いを求めることもできずに。
 


「よしよし。泣いていいよ。」

夕璃の頭を撫でながら朗が言うと、夕璃は声を上げて泣き出した。
 
 


しばらく朗の胸で泣いていた夕璃。

子供のように声を上げて泣いた後、照れた顔で朗を見上げる。
 


「ごめん。もう大丈夫。」

制服の袖で涙を拭って、夕璃は言う。
 
「泣いてすっきりした?」

夕璃の両肩に手を置いて、夕璃の顔を見て言う朗。

小さく頷く夕璃に、
 


「我慢しないで。俺には何でも言っていいよ。」

と言う。
 
「朗叔父ちゃんなんか、ママのスパイのくせに。」

敏感な夕璃は、朗の気持ちに気付いている。

光子に憧れていた朗に。
 


「痛い所を突くな、ユーリは。でも、もう諦めたから大丈夫だよ。」

朗は否定しない。

それは、もっと夕璃を傷つけるから。
< 12 / 90 >

この作品をシェア

pagetop